まうら・黒猫のら
『しずかのせかいの骨組み.』
2017.2.10 - 2017.2.12
SPACE : WEST 1-G
まうらさんと黒猫のらさん。
二人の作家が描いた今回のテーマは「骨」
描かれた作品からは、おどおどろしさは全く感じられず、
とても静かで、死んでいるのか、眠っているのか。
手向けの花のような印象さえ受けます。
「正直者の肖像標本」黒猫のら
本展示会の世界観、
黒猫のらさんは「しずか」、まうらさんは「しづか」という
二人の少女を内包した世界観を描いています。
テーマの「骨」という言葉には、
物語を支える骨子という意味も含めてらっしゃるそうです。
一枚の静止した絵画作品でありながら、
また非現実要素を多分に含みながらも、
自然とほどけるように、それら物語の帰路が浮かんでくる。
「幸せな眠りを。」黒猫のら
本展示会では、複数種の額が用いられている中、
最も目を引いたのが本作。
キャンディーのように輝くイルミネーションは、
よく見ると、肋骨に守られている。
しかし、前述の通り不穏な気配は微塵も感じられない。
そもそも、血も骨も、私たちを構成する骨組みであり、
不穏なんて評価をするのは可笑しい話。
そんなこと意識にものらず、
ただひたすら、彼女は瞳を閉じて、
延々と敬虔な祈りを捧げ続けている。
「いつかの輝石」黒猫のら
××××年××月××日、
蒼い惑星付近で発見。
歪な表面はまるで、月の表皮のような明るさ。
硬度は相当なものだろうに、
何かのきっかけで破損し、内部が露出...すると現れた。
まるで時間と出来事そのものを結晶化したいみたいだ。
内容物ではなくそこを住処にする妖精のようにふるまう彼女は、
もしかしたら、その輝石の歴史も成分も知らないかもしれない。
「しづかの部屋」まうら
ようこそ、ようこそ、居眠りさん。
あくびをかみ殺し、立ち尽くす、しづか。
彼女の部屋には、心臓や血液を必要としない友人が同居しているようだ。
斜めの本棚やろうそく、枠がぐんにょりした額。
彼女を包む世界の重要なヒントが、
この一枚の中に描かれている、と思う。
「額装アクアリウム」まうら
真っ暗な空、それは絵画表現ともいえるし、
本当に真っ暗なのかもしれない。
黒い海を泳ぐ、飛ぶ、巨大な魚の骨。
縦型の雲だと思ったそれは、気泡かもしれない。
そうか、ここは水の中。
サーカスを見ようと、小魚たちがテントの中へ向かい、
それらを傍観する少女のシルエット。
彼女はどこにいるだろうか。
内か、外か。
「骨身の祈り」まうら
ふわふわと飛んでいけ。
「額装アクアリウム」と同様に、
舞台が水中であることを思わせる。
が、彼女の装いは大きく異なり、
露出した骨、背中のネジ巻きと、
微笑みとは裏腹に、切実な事情も見え隠れする。
それでも微笑みは絶やさず、
本当にか細い腕を重ねて、祈りを捧げている。
「祈り」というキーワードは、
本展示会、お二方の作品に共通し、
また「しずか」と「しづか」を内包する世界の性質に、
関連性があるように思えて仕方がない。
覚めたら消える、実体の無い、幻みたいな世界。
その存続を彼女たちは異なる場所で、同じように願う。
その願い、祈るさまは大変いじらしく、
この世界に生まれたことに対する喜びにあふれている。
まうら・黒猫のら
『しずかのせかいの骨組み.』
2017.2.10 - 2017.2.12
SPACE : WEST 1-G