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もぐさ 『すきまのすみか』



もぐさ
『すきまのすみか』
2020.2.23-2020.2.29
at WEST 1-B

とりとめのない日常風景と海の中の世界が混ざり合う独自の物語を描くイラストレーター もぐささんの、3年ぶりとなる個展が開催中です。見たこともない風景なのにどこか懐かしさを覚えるような、郷愁を誘う作品が並んでいます。





2017年に開催された個展『絵空言の街』以来3年ぶりに、テーマを新たに開催されているもぐささんの個展。前回の個展から描き貯められた作品を中心に、より見ている人の意識の奥へ訴えかけてくるような、ノスタルジーを感じる世界が紡がれています。

スペースに入り迎える5点の作品は、1ヶ月もの間瀬戸内の島に滞在した時に見た廃墟や廃校などからインスピレーションを得た作品たち。廃墟内部に立ち入った時に感じる、「かつてそこに居た、在った気配」が少女と宙を泳ぐ海の生き物たちによって象徴的に描かれています。




5点の作品にはどれも「階段」が描かれています。

上下に隔たった空間を繋ぐ役割をもつ階段は、「どこかに行くためのもの、繋ぐもの」で、建物それ自体とは違って主役にはなれないモチーフ。もぐささんはそんなとりとめのないものに魅力を感じ、階段を描くのだそう。




今回の展示では、作品のためにご友人が制作したというサウンドトラックが流れていて、より作品の世界に入り込めるような展示空間となっています。

今回の展示『すきまのすみか』のメインビジュアルとなった作品。どこかに存在してそうな、アパートが夕日に照らされたような色彩に包まれて、そのまわりを魚たちが泳いでいます。夕暮れどきを告げるチャイムが聴こえて来そうですね。タイトルにある「すきま」とは、建物と建物の間だったり、心の隙間だったり、物理的な意味も精神的な意味も含まれているのだとか。

一見なんの変哲ない、どこにでもありそうな日常と海中の世界の生き物たちが共存する、ドラマチックな世界を描くもぐささん。どこにでもありそうだからこそ、見る人の記憶のどこかにあるノスタルジアを呼び起こし、親しみを感じるのだと思います。




作品はすべてデジタルで描かれていますが、展示されている作品からはアナログのような質感が感じられます。

もともともぐささんは美術大学で日本画を学んでいたそうで、その経験や技術が形態が変わっても作品に活かされています。作品をよく観察して見るとアナログのような滲みやマチエールが表現されており、これらは実際に手描きしたものをスキャンし、テクスチャーとして重ねているそうです。

さらにデジタルとはいえ原画作品であるということを意識し、支持体となる紙についても本来の色彩やマチエールが感じられるよう、質感のあるものを選んでいます。つまりPCやスマートフォンでは感じることができない「息遣い」が、展示では体感することができるのです。




額装された作品とは別に、アクリルブロックにプリントされた作品が3点並んでいます。
水中の世界を描いたもぐささんの作品と、アクリルのような透明で瑞々しさのある支持体の相性が抜群で、半立体ということも手伝い絵の中の生き物たちが水中にたゆたうようにも見えます。


展示では本記事で紹介した作品以外にも、原画をプリントしたポストカードやこれまでの作品を収録した画集、本展示『すきまのすみか』の画集なども手に取っていただけます。また作品には原稿用紙に書かれた散文が付されており、合わせて作品を見るとより世界観に没入ができる展示ならではの作品の楽しみ方が体感できるので、ぜひぜひ足をお運びください。2/29(土)まで開催中です。


https://mngsmgs.wixsite.com/sukimanosumika




【展示スペース:WEST 1-B】
DFstaff isaka