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ama 『言わぬが花』



ama
『言わぬが花』
2018.3.26-2018.3.28
at WEST 2-D

いわぬ-が-はな【言わぬが花】

はっくり言わない方が味がある、差しさわりがない、の意。
《広辞苑第七版》






場の雰囲気や空気など、言外のコミュニケーションを重視する日本人にとって、「言わぬが花」という言葉は実に日本語らしい表現だと思います。
伏線らしき意味ありげな描写が回収されずに終わる映画とか、村上春樹の小説が愛されるのもそんな風土があるからこそなのかもしれません。

本展示は武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科の三人組ama(=ナガセアオイ、セオミズハ、タケダアヤナ)が、三者三様の形態で「言わぬが花」という言葉を解釈した作品を展示しています。

スペースに入って最初に目に飛び込んでくるのがこちらの作品。人物のポートレートのなかに、淡い色彩の抽象画と柔らかい陽光に照らされた道草の写真がひとつのフレームに収まっていて、一層目を引きます。




「言わぬが花」という言葉が「言葉で表さない」ことを意味することに対し、「花」には「花言葉」という、花に込められたメッセージが存在します。

言葉にしないことと、ものによって言葉を伝えること。ナガセさんによるこちらの作品は本展示のテーマと相反するように見える関係性に着目し、さまざまな花とその花が持っている言葉を一冊の本にまとめた作品。写真の美しさもさることながら、組み込まれた文字の見せ方にもメッセージ性があります。




写真、グラフィック、絵画によってそれぞれがテーマを咀嚼している本展示。
順路の最後にはセオさんによる絵画作品が並んでいます。

詩と絵画が一組となって展示されており、その中の一つがこちら。
ジム・ジャームッシュ監督の最新作『パターソン』の劇中で、一人の少女が主人公パターソンに読み聞かせた詩から着想した作品です。筆者がたまたま最近この映画を見たこともあって、つい見入ってしまいました。


一つの形態に拘らず、さまざまなアプローチで一つのテーマに向き合った本展示は、空間の使い方や作品の見せ方に至るまで、とてもよくまとめられた展示でした。
本日が最終日となりますが、お時間のある方は是非見に来て下さい。


【使用スペース:WEST 2-D】