『早熟』-木瓜- Precocity -Flowering quince-
花菱慧 個展『蝶よ花よ』
Kei Hanabishi
GALLERY SPACE : 1-G
眉上数センチの位置で切りそろえられた前髪。
真っ直ぐに整えられた眉。
潤いある唇と隙間。
ほんのり染まった頬。
真正面を見据える三白眼。
ただ、そこに佇んでいるだけで、花のように咲き誇る、
魅力的な女性たちを描いた絵画をご紹介致します。
花菱慧さんが今回、出展されている絵画作品は、
どれも喜怒哀楽といった感情の揺らぎを表面に出ていない。
私達が自然と相手の気持ちを察する時に、
主に参照するであろう「表情」からの情報が極端に少ないのだ。
『待ち人』-曼珠沙華- I'm waiting for you. -red spider lily-
しかし、敢えて、無理に表情の変化を抑えているわけではなく、
また、起伏が無い瞬間を捉えた、というわけでもない(と思う)
描き方が違う、ただ、それだけのこと。
花菱慧さんが描き、捉えているもの。
言い換えるならば、それは気や空気といった、
不可視の存在であるように思う。
『白い追憶』-どくだみ- The White memory -Houttuynia cordata-
髪を結う、そのプロセスの手つき、
視線、口元、直接的には行為とは結び付かない事柄であっても、
見る者の印象をかえるには十分な要素となり得る。
決して目立つことはないし、
曖昧で、注視していても見過ごしてしまうかもしれない、
そんな微小な事柄を、大切に大切に描いていらっしゃる。
『儚い恋』-朝顔-Transient love -Morning glory-
編み込まれた長く伸びた髪を、
朝顔とその蔓で柔らかく、縛っている。
朝顔には「儚い恋」なんて花言葉があるようで。
瑞々しい画面の中に佇む彼女の心情を、
可憐に、代わりに、語る。
繊細なアートワークを披露する花菱慧さん。
パネルの側面にも、筆を伸ばし、
彼女のたちの心情を漏らすことなく描き上げています。
是非、直接作品をご鑑賞頂いた上で、
暫く、作品の前で立ち尽くしながら、
じっくりと作品の中に描かれた空気を吸い込んでみてください。
冬の日の朝、鼻腔を突く、あの冷たさにも似たものを、
感じ取って頂けるのではないかと。
(ぱんだ)
花菱慧 『花菱慧個展 『蝶よ花よ』
会期:2016.3.25 - 2016.3.27