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『身体展』展示レポート vol.3

 


滑らかで温かく、抱きしめるとどくどくと血の流れを感じる、人間の身体(しんたい)。
生命そのものである私たちの身体は、この世に生を受けてから死の瞬間まで、常に成長と変化を遂げています。 

肌、手、足、顔、髪、筋肉、臓器に至るまで、まだまだ解明されていないことも多く、自分自身のものでありながら不可思議な「身体」。
それは芸術の分野においても、古来より様々な形で表現されてきました。
 特に近現代では、絵画や彫刻といった表現技法に留まらず、コンテンポラリーダンスや現代アートといった分野においても広義で用いられ、「身体」は我々に強いメッセージを投げかけています。 

そんな中、コロナ禍においてフィジカルな対話が難しくなってしまった今日。
こんな時代だからこそ、「身体」について思考することは人と人の「心」の距離を縮める方法なのかもしれません。

デザインフェスタギャラリーでは初の企画展となる本展。 

以下、19組中7組(13〜19)の展示レポートをご紹介いたします。

13:The Tome of Masa feat. Tom Fajst
14:北川ゆうじ
15:rie.mizushima
16:Lisa Doteuchi
17:東睦美
18:田中ちひろ
19:中澤めお

その他の展示レポートはこちら!
『身体展』展示レポートvol.1
『身体展』展示レポートvol.2

13:The Tome of Masa feat. Tom Fajst


「にゃんこ展10」にもご出展いただいたThe Tome of Masaさん。
今回は日本在住の海外作家さんであるポーランド人のTom Fajstさんと合同での出展となります。
お二人の作品に共通するモチーフは赤い稲妻のマーク。
このマークは、現在ポーランドで大規模なデモが発生するなど、社会問題となっている「人工妊娠中絶の禁止」に対するの反対運動のシンボルなのだそう。


こちらはTom Fajstさんの作品。
親子のような、聖母と天使のような神聖な石膏像。そして女性の胸元には赤い稲妻が走ります。
そこに込められた静かでとても強いメッセージは、今回起こった社会的問題に強い啓蒙を唱えます。



The Tome of Masaさんの作品の中には、驚きの仕掛けが!?
ギザギザと折られた作品を左右それぞれの角度から見てみると…?
それぞれ異なるイラスト作品が現れます!
人間の脳内にはもう一人の自分がいて、実は操られているの…かもしれませんね。

14:北川ゆうじ


ポスターサイズの作品を出展されている北川ゆうじさん。
ダイナミックでカラフルな作品からは、ポップで明るいキャラクターたちが画面中を動き回ります。



そしてグッと目を惹きつけられるのが、なんといってもこの大きな唇です。
つやつやとした健康的な口の中から溢れ出るサイケデリックな模様とキャラクターたちはとてもポップで、まるでコラージュのような作風もとても印象的。
キラキラと輝く星たちとニコニコと明るいキャラクターたちを見ていると、鬱屈とした気分ごと晴らしてくれるようです。

15:rie.mizushima


人間が持つ複雑な感情を表現するため、あえて表情だけのシリーズ描き続けているrie.mizushimaさん。
今回は『信者 2』と『私に触らないで』と題された2点を出展中です。


『私に触らないで』の表情は、タイトル通り負の感情が表に出ており、その瞳は憂いを帯びています。
悲しげなようにも見えたり、嫌悪のようにも見えたり、その時々によって様々な感情が流れj混んできます。


『信者2』の表情は、少し狂気じみた不気味さも感じられます。
口元の描き方がとても印象的で、上がりきらない口角と、彫り深く描かれた鼻の下が、脚色されていない人間らしさをより強調しているよう。

16:Lisa Doteuchi


ポートレートを中心に、心臓や手のイメージも普段から多く描かれているLisa Doteuchiさん。
今回はアクセサリーなど雑貨も多く取り揃えられた展示となっております。


具象モチーフの他に、抽象表現が取り入れられた作品も。
左の『人間』と題された作品は、赤の部分が擦り傷のようにも見えたり、はたまた心臓のように見えたり、捉え方は千差万別。
右に並べられた『Heart』との対比がとても印象的で、様々な表情が伺える作品です。


手のデッサンも多く描かれているDoteuchiさん。小指に巻かれた赤い糸は、繋がっているのか、はたまた切れているのか。
マットな色合いの中に映える赤がとても印象的な作品です。原画も販売されておりますので、気になった方は是非手に取られてみてくださいね。

17:東睦美


黒い目と白い身体を持つ人物を描かれている東睦美さんの作品は、悲しみの色が色濃く表現されています。
髪や口、鼻など、具体的に顔が描かれていない人物のその憂鬱とした負の感情は、誰しも一度は感じたことのある感情。
普遍的な感情であるからこそ、必要最低限の身体部位のみを残して描かれているようにも感じます。



目から涙を流している人物の作品群はとても印象的で、苦しみや悲しみといった、「哀」の感情に押しつぶされている様子が伺えます。
表に出せない感情だからこそ、作品から感じ取れるエネルギーは凄まじく、ダイレクトに心に突き刺さり、性差を超えた感情表現にグッと心揺さぶられます。

18:田中ちひろ


『F0号展』にもご出展いただいた田中ちひろさんは、ハンガリー刺繍を用いて作品を制作されています。
グラデーションと色合いがとても印象的なハンガリー刺繍の作風をそのままに、モチーフを描画されている様子は圧巻です。


メインとなるこちらの作品は、風にたなびく髪がとても美しい女性の横顔が描かれています。
ブラウンを主とした本作は、とても爽やかな風の印象までも感じさせ、見ているだけで心が穏やかに、そしてスッと気持ちが晴れるような印象を与えてくれます。


鳥の小作品も。ハンガリー刺繍の柔らかい赤が可愛らしい差し色になり、とても美しいですよね。
今回はハンガリー刺繍を自宅で制作できるキットも販売されています。
興味を持たれた方は、その文化ごと体験してみてはいかがでしょうか。

19:中澤めお


普段はイラスト作品を描かれている中澤めおさん。
今回は身体展に合わせ、中澤さんご本人の手をあらゆる角度やシチュエーションで撮影された写真作品をスペース中に張り巡らされています。



他者の手をここまでよく見る機会はあまりないかもしれませんが、関節や手の皺、爪など、じっくりと見ていくと非常にパーソナルで、圧倒的な個性を発揮します。
光や背景にも趣向が凝らされており、手ひとつとっても様々な表情が感じられます。
そして折り重なるように展示されている作品群は、触って見ていただくことができます。
お気に入りの作品があれば購入も可能ですので、作品探しを楽しみながら鑑賞されてみてくださいね。

『身体展』は3/20(土)まで開催中!

下記より展示レポートの続きをお楽しみください。
『身体展』展示レポートvol.1
『身体展』展示レポートvol.2

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