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さかきみちこ/からとあおい 『阿吽』



さかきみちこ/からとあおい
『阿吽』
2018.2.1-2018.2.7
at WEST 2-B, C

立体作品の展覧会の割合がさほど多くないDFGですが、
現在多摩美術大学工芸科陶専攻に在籍する二人による展示が開催されております。





唐戸 葵『なづけ』

『阿吽』と題された本展示は、多摩美術大学工芸科陶専攻に在籍する榊 美智子さん、唐戸 葵さんによる陶作品展。
2-B、Cのスペースを一人ずつ使い作品が展示されています。

写真は2-Cに展示された唐戸 葵さんの作品。


唐戸 葵『ひとかけら』

今回の展示では両名とも、学科で課された過去の課題作品を展示されています。
同じ専攻に通っているということで共通のテーマのもとに制作された作品を観ることができますが、もちろん解釈は違います。

写真は「場所」というテーマで唐戸さんが制作した陶作品。この作品では場所を「山」に設定し、そこから発想を膨らませた作品がこちらの『ひとかけら』です。

登山を嗜む人が頂上に登った証として残す「積み石」から着想を得たというこの作品は、写真では見えませんが底の部分に丸っぽい山型の溝があります。

積み石により自分の居た痕跡を残すことと同様、この陶器にある溝を使い山頂の砂土で小さな山を作り、いわば自分の分身(=かけら)としてその山との繋がりを残すことを目的とした陶器なのだそう。古来より山岳信仰が根付く日本にとって、人々が信仰の対象たる山に自らの痕跡を残したがった行為は、それ自体が自然を信じ敬う気持ちの発露と言えるのかもしれません。




榊 美智子『わたつみのこえ(漂流物B 白ひょうたん)』

お隣の2-Bは榊 美智子さんの展示スペース。
唐戸さんの作品と比べるとサイズの大きいものが多い印象。しかしどこかしら通底するものも感じる。このあたり、タイトルが『阿吽』たる所以なのでしょうか。

写真の作品『わたつみのこえ(漂流物B 白ひょうたん)』は前述した唐戸さんの作品『ひとかけら』と同じく「場所」というテーマで制作された作品。唐戸さんの「山」に対し榊さんは「海」をベースに作品制作を行ったそうです。

ご自身が「太鼓」と呼ぶこの作品は、ナイジェリアのイボ族が使うウドゥドラムから発想を得て陶で表現したもの。もちろん実際に音も出せます。




ということで実演していただきました。
さすが作者とあって演奏はお手のもの。写真の作品の叩く部分には山羊革が使われており、さながら民族楽器のような音色を奏でていました。

「海」はすべての生命の源泉であり人間もその例外ではありません。
しかし陸に上がり文明を築き、ふるさととも言える海はそんな現代の人間にとってときに災害をもたらし、底知れぬ恐怖を与える畏怖の対象、遠い存在となっているといえます。
アフリカの少数民族が踊りや音楽の儀式によって信仰の対象に近づこうとするように、音を奏でることによってもう一度海に近づこうという試みから榊さんはこの作品を制作したそうです。対象と繋がるためのツールという意味で、二人の作品は共通しています。


文章で触れられなかった作品についても一つひとつ丁寧に解説をしてくれたのですが、もし足を運ばれた際にはぜひじっくり細部まで作品を観察し、お話を聞いてみてください。

展示は2/7(水)まで開催しております。

【 展示スペース : WEST 2-B 】