「青」に惹かれる理由は何だろう。
これまでたくさんの「青」の作家さんとの出会いがありました。
「青」ひとつとっても、作家ごとにその青は独特の個性を放ち、アイデンティティを持って色を成します。
表現する画材、テーマ、コンセプトは違えど、いずれも深淵に潜むものは穏やかで温かい心。
そこには、”癒し”という言葉では括り切れない、様々な感情が「青」には存在するように感じます。
梅雨と初夏が交差する季節。
その湿り気と爽やかな風が綯交ぜになった原宿の地で、19名の作家の「青」が混ざり合います。
このブログ記事では、スペース番号「13」〜「19」までの出展作家を紹介いたします。
13:尸
14/15:ミウラホシイレナ
16:狐狸写館
17:あすまる
18:カメラ係
19:erico
14/15:ミウラホシイレナ
16:狐狸写館
17:あすまる
18:カメラ係
19:erico
13:尸
切り絵作品を手掛ける尸さんの展示スペース。
1点1点がとても細密に切りはりされており、遠目から眺めると木版画のような質感に見えます。
blue展に合わせて青が鮮やかに映える作品が並んでいます。
花飾りを被った人物画。
青といってもさまざまなトーンがありますが、ひときわ明るいトーンの青色が人物の髪色とまっちしていて、浮き出るようにアクセントとなっています。
流れるような髪の質感もさることながら、花冠の花びら一枚をとって見ても、しなやかに再現されています。
花のような自然の青と対照的に、こちらは化学繊維の青。
「安全安心」というタイトルから、コロナ禍という時勢を感じさせる作品です。
色自身が持つ鮮やかさとは対照的に、リアルな質感が無機質にも思えてきます。
14/15:ミウラホシイレナ
二つのスペースを縦断するように作品を展開するミウラホシレイナさん。
ドローイング、写真、詩を駆使して一つの世界観を表現しています。
本作はプールで撮影したミウラさんのご友人の写真を基軸にした作品。
上部の横長のドローイング作品は、プールの底の方から水面を見上げて、夏の太陽が覗いているような構図に見えます。
青みがかったトレーシングペーパーに描かれたドローイング。
こちらにもアクセントとなる「青」が入っています。
詩は無造作にピン留めされていて、吹き出しのようにふっと頭に浮かんだ言葉のようです。
こちらが本作で軸となっている写真作品。
何気なく取られたプールでの一コマに、水面のきらめきを写し取ったようなドローイングが重なっています。
ちょうどいいタイミングで関東地方は梅雨明けをしましたが、これからくる夏が楽しみになるような爽やかな作品です。
16:狐狸写館
続いてDFGでは動物写真家としておなじみの狐狸写館(中村沙絵)さんの作品。
今回のblue展では、動物園・水族館で見られる「青」をテーマに、さまざまな動物とその周辺のブルーにフォーカスした写真作品を展示されてます。
水中を泳ぐペンギンの躍動感が印象的な作品。
全方位に可愛いペンギンですが、水中を泳ぐ姿はのびのびしていて、ペタペタと地上を歩く姿とは別の側面を見せてくれます。水面から入る光が幻想的で、水泡を伴った水の色がキラキラしてとても鮮やかですね。
続いての作品ですが、これは何に見えるでしょうか?
この写真では伝わりづらいかもしれませんが、これはクジャクの羽の一部をクローズアップしたもの。まるで青色の色見本帳のように、いろいろな青が混じりあっています。
普段、動物園に遊びにいっても一つの色に注目して動物たちを観察するということはあまりありませんでしたが、新しい動物園の楽しみ方かも?
17:あすまる
あずまるさんの作品は浮世絵作品を題材にした3点の連作。
一見すると本家同様、日本の象徴的な風景を描いた作品のように見えます。
しかし、今回の作品はご覧のように「宇宙八景」と銘打たれた、宇宙空間と浮世絵がコラボレーションしたもの。
浮世絵作品に象徴的な大きくうねる波は浮世絵のあのテイストそのものですが、空の様子は星々が輝いた宇宙空間になっています。
そして波の奥に描かれているのは、月でも江戸の町でも富士山でもなく地球。
宇宙のどこかで畝る波と星々と地球という、ありえないようなスケールの作品です。
ガガーリンは「地球は青かった」という言葉を残していますが、地球の深い青と波のコラボレーションは今回のblue展にぴったりです。
18:カメラ係
デザフェスへの出展やギャラリーでの個展開催など、精力的に活動しているカメラ係さんの写真作品。blue展の出展作家さんの中でも、一際青が象徴的な作品が全面に並んでいます。
デジタルカメラのホワイトバランスを意図的にブルーに傾けることにより、全体が青みがかる独特の風合い。ハイライトからシャドウにかけて、どの階調にも本来の色に青色のトーンが乗っかることで、日常の風景が一変しています。
青みがかった風景に白い衣装が映えるポートレート。
シチュエーションだけでも幻想的ですが、ぼんやりとした輪郭も相まって、まるで白昼夢を見ているかのようにその世界観に入り込んでしまいます。
19:erico
続いても写真で表現する青。
こちらは清涼感あふれるブルートーンが印象的なericoさんの一連の作品は、絵画的な風景写真や静物などが丁寧に収められています。
ericoさんは主にフィルムカメラを用いて作品を制作。
フィルムらしい階調とツァイスレンズの特徴でもある柔らかな色ノリの組み合わせで、青以外にも赤や黄など、カラフルで優しいトーンが印象的です。
今年の梅雨は約1ヶ月と短かったですが、雨で憂鬱になりそうな日々に彩りを添えてくれるのがアジサイですね。
こちらの作品のような静物画的な写真は、構図の取り方や空気感など、一つの作品に対する被写体との向き合い方が、鑑賞者にも親しみやすい絶妙な距離感。自分の生活空間にこんな一角があったらいいなと、想像が膨らみます。
7/11よりスタートしたblue展は約1ヶ月の期間、8/7(土)まで開催中。
作家さんによっては作品の入れ替えなどもあるので、ぜひ何度でも足をお運びください。
[使用スペース EAST ARTPIECE]