RILIKO
『一色の記憶』
2021.3.5-2021.3.7
at EAST 203
多摩美術大学大学院情報デザイン研究領域に在籍するリ・ハンユさんの研究発表展示として行われている『一色の記憶』。
VR技術を認知症治療に応用できないかという発想から制作したVR空間を体験できる展示となっています。
「一色の記憶」は、アルツハイマー型認知症の予防を目指してリさんが開発したバーチャルリアリティーシステムの作品。
VR空間に広がるフィールドを歩いて、ゲーム感覚でタスクをこなしていき、認知機能が鍛えられるという仕組みとなっています。
展示会場では、実際にVRゴーグルを装着した際に目の前に広がる空間がプロジェクターから投影されています。中の様子はこんな感じ。
広々とした住居空間が広がっており、色は寒色系、とくに青系で統一されています。
これは青色が「心を落ち着かせる」という心理的効果があるからなのだそう。
展示タイトルの「一色の記憶」もそうした発想から由来しており、VR空間でもタスクをこなすごとにフィールドのテーマカラーが変容していくという視覚効果が現れます。
フィールド上にはリビングなら「椅子」「植物」、水場には「タオル」「洗剤」など、その場所に配置されているものに対応する文字が散りばめられています。
その文字をコントローラーを使ってつかみ、実際にものが配置されているところへ移動(マッチング)させることで、タスクが達成されます。
このプロセスだけを見れば単純作業のように感じるかもしれませんが、言語を認知し、ものの形と概念を認知し、双方の関係性を動作を伴って結びつけるという一連のレクリエーションが認知症の予防に繋がるのでは?ということが、この作品のテーマとなっています。
実際に、専門家からの意見として「日常的な部屋を再現し、鑑賞者に生活感を感じさせ、単語の意味を探る動作によって意味記憶と記憶力をトレーニングする効果を期待する。本研究は当今アルツハイマー型認知症の予防効果を目指す重要な試みである」と評価されています。
リさん曰く、本作は「まだ発展途上」とのことですが、そう遠くない未来に認知症予防の第一線で導入される日が来るかもしれません。展示は3/7(日)まで開催中です。