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山下弘匡 永田悠馬 『二人展「異界」』



山下弘匡 永田悠馬 
『二人展「異界」』
2020.1.24-2020.1.30
at WEST 2-A

迫力ある版画作品とペインティング作品が異界へと誘う山下弘匡、永田悠馬の二人展『異界』。日々の生活の中で気づかずに見過ごしているだけで、その存在はすぐそばにあるのかも?と思ってしまいます。





山下弘匡さん、永田悠馬さんは多摩美術大学絵画学科版画専攻で学ぶ三年生。
本展示が弊廊では初となります。

『異界』とは文字通り自分が住んでいる世界とは異なる世界のこと。
それは架空の「あるかもしれない」世界のことでもあるし、自分とは交わることのない、でも存在はしているコミュニティーのこととも言えます。

そんな『異界』というテーマを、それぞれが違ったアプローチで表現をしています。
こちらの作品は永田さんによるリトグラフ作品。
不気味で近寄りがたく、畏怖すら感じてしまう架空の生き物たちが描かれています。




作品を一目見たとき、幼い頃に読んだ『三匹のやぎのがらがらどん』を思い出しました。
お腹をすかせた三匹のやぎが食料を求め山のてっぺんを目指す道すがら、得体の知れない怪物「トロール」に遭遇するという物語で、絵本の中のトロールは「醜く」、「恐い存在」として描かれています。

その姿を今でも思い出せるほどのインパクトがあったのですが、永田さんの描くこの生き物のまっすぐに狙いを定めているような瞳からは、まさにそんな異界からの視線を感じます。




一方の山下さんは大型のポップなペインティング作品を展示。
画面にはびっしりと手のひらが描かれており、タイトルには『HELP!!!!!』とあります。

この手のひらは誰かを呼び止めるとき、または助けを求めるときに挙げる手を描いているのだそう。




ではなぜ無数の手のひらを描いたのかというと、そこには山下さん自身の育ってきた環境が深く関係しています。というのも、山下さんのご実家は天台宗のお寺の檀家だそうで、幼い頃から千手観音像を間近に見て育ってきたのだそう。

もともと仏教には『極楽』、阿弥陀仏の住まう幸福に満ちた別世界が存在するという考えがあります。つまり本展示のテーマと密接に関連づいている作品なのです。本作のベースにある千手観音も、言うなれば私たちの暮らす現実世界はいない異界の住人。それを知って改めて作品を見てみると、見え方も変わってきますよね。

ところどころ色が施されている部分があり、その色は六色あります。
眼,耳,鼻,舌,身,意の6つの感官能力を指す仏教用語『六根』を、ことなる六つの色で表現したものです。




二人の合作によるデザインパーカーもあります。
この作品では山下さんの作品の千手観音感がわかりやすく、より色濃く出ています。


展示は1/30(木)までの開催となります。
異界の入口へ、どうぞお越しくださいませ。

https://twitter.com/hutariten_ikai

【 展示スペース WEST 2-A 】


written by isaka