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nanano 『24』

nanano
『24』
2019.2.-2019.2.3
at WEST 1-F

写真を媒介として自身の記憶を巡る時間の旅。
24歳を機にその過程を収めた私的ドキュメンタリーの写真作品が展示されています。






写真が一般家庭に普及して以来、そのもっぱらの役割は「記録」です。
自分の記憶で補いきれない部分を、モノとして補完してくれる写真は、時間を置いて振り返ると当時は気づかなかった新たな視点すら与えてくれる、奥行きのあるメディアともいえます。

そんな写真に付された役割を、純粋に全うせんとする作品が並ぶ本展示。
この作品でnananoさんは、自身が歩んできたこれまでの道のりで、思い出の深い24の場所を巡り、写真に記録しています。




作品は2枚1組で構成されており、上は「その場所へ行く道」、下は「その場所から帰る道」を写しています。

その場所自体を点で写すのではなく、その場所へ通じる、もしくはその場所から帰る道中=線を写すことで、当時抱いていたその場所に対する感情を1枚の写真に残そうという試みです。

こちらの作品は今回の作品のスタート地点である、幼少から大学卒業までを過ごした自宅




写真を撮り、それを見るということは、主観の視点で見ていた景色を客観視するということ。そしてそれは目で見た風景を、時間を経ておぼろげにも脳内に再生する行為に置き換えることができます。

しかしながら人間の機能と代替可能なそれらの写真の機能は、デジタル時代に突入したことでその意味が揺らぎつつ。「時間を経て眼前に現れる」というタイムラグがなくなり、「フィジカルなモノとして残る」ということが少くなったからです。

nananoさんは今回、作品をフィルムで撮ることで、人の記憶の代替としての写真の機能を表現しています。本作では思い出の地を撮影する際、その地に通っていた当時の視点(幼少期なら幼少期の身長に合わせたアイレベルで)、そしてその地に通っていた時間帯も再現。ごく私的な一連の作品ですが、当時の主観を再現することで見ているこちらも当事者のような気持ちになります。




学生自体のアルバイト先へ続く道。
早朝から昼までの勤務だったため、本作でも往路となるこちらの作品は早朝に撮影されています。


このような形での作品制作、そして個展は初めてのことだったそうですが、コンセプトとそれを再現するアイディア、表現力などどれを取っても強度の高い展示です。
本日が最終日となりますが、ぜひ足をお運びください。

【展示スペース:WEST 1-F】