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ゆきの/翠/ami/辰巳/真 『呼吸展』



ゆきの/翠/ami/辰巳/真
『呼吸展』
2017.2.13 - 2017.2.15
WEST : 1-A SPACE

呼吸とは当たり前のようにするものですが、
生きて存在するためになくてはならないものです。
5人の作家たちの作品の、息づかいや空気感を感じてください。

多摩美術大学グラフィックデザイン学科1年
5人の作家によるイラストレーション展示。




「ちがう」ゆきの


3人の少女と人形が、透明な一直線のイスに腰掛けている、
ように見えたり、
アニメーション内の一コマ一コマを、
シームレスに繋ぎ合わせるように見えたり、もする。

後者のイメージの場合は、
少女が人形に変化するか、または少女は人形だった、パターン。

彼女の華奢な身体と程良いマージンは、
どちらの解釈も受け入れる余裕を持ち、
同時にどちらも違う可能性が残る。

細かな少女のしぐさがとても愛らしい。





一点一点を注視すれば、ほどよい秩序の反乱が見え、
俯瞰すれば、その反乱がゆとりを持ち、
コントロールされた結果であると知る。

溶解したモノの形、構成要素、
かつて何かだったものが作家の手により、
当初与えられた外見的なアイデンティティが喪失させられている。
この過程を経て行われるのは、対象の抽象化であろう。

よくこれほどまでに様変わりしたものたちを、
心地よくまとめあげ、
一種のインスタレーション的な光景を展開させてしまうものだと感心する。



「1人の夜について」ami


三つの窓が設けられた額を、
三コマ漫画の枠線に見立て、
とびとびの時間軸をひとまとめにする。

どの瞬間の少女も虚ろ向きで、
憂いで、いる。

その表情に気付くと作品をおさめた額が、
彼女を囲う、部屋のように機能し始める。

決して閉じこめているわけじゃない。
夜が明ければ、
きちんと、いつでも外にでられる、そう思える。



「ふたり」辰巳


手前の二作品が「ふたり」
かなり近接しないとわかりませんが、
強弱ある絵筆の走らせ方が大変魅力的。

その魅力ある線は、
発色の良いアクリル絵具で余す所無く表現されている。

突然、
0.3mmくらいのペンで引かれたような、
均一な太さの線が表れて、ドキリとする。

山本直樹のカラーイラストのように、
熟した性を感じさせるのに、多感な思春期の気配をも持っている。
一癖も二癖もあるような、ニヒルな表情が、
ちょっとした嗜虐心をも煽ろうとする。

※Twitterで作品の近接写真を公開されていたので引用させて頂きます※







ネズミ色の地の上に寝転ぶ、
赤い色をした猫とネズミの集団。
この場合、ネズミ色は容易にコンクリートを想起させる。

キャンバス全体が、うすーく黒く汚れているように表現されたマチエールは、
クーピーで表現されているとのこと。
十分な下地をあえて作らぬことで可能になるこの技は、
彼らの居場所と相まって、より効果的に機能している。



個人的な欲を申せば、
もう一段階、大きいスケールの作品を是非見てみたい。
小さな部屋に飾られた五名の作品は、
次なる発表の機会を心待ちにしたくなるほど、魅力的。

(ぱんだ)

ゆきの/翠/ami/辰巳/真
『呼吸展』
2017.2.13 - 2017.2.15
WEST : 1-A SPACE