信仰推進委員会
『 それぞれの神さま展 』
会期:2016.4.29 - 2016.5.1
GALLERY SPACE : 304
神様は近くにいるはず。 自分にとっての神様は何だろう。
それぞれが熱狂的に崇拝・愛しているものを
作品を通して表現することを目的に集まった
アーティストグループ『信仰推進委員会』による展示会。
あじまあかねさん
円形のグリーンが地面に敷かれ、
さながら魔法陣のような構成、あじまあかねさんの作品。
想像の行き先は、足元から上部にかけて。
その発端とも言える足元。
掘り返したかのように、グリーンの上に土が盛られ、
作り物の花や書物、手紙の切れ端、写真を部分的に覆う。
また、盛られた土の山に、
煙草、蝋燭、小枝らが枕飯のことを思い出したの如く、
または弔う気持ちを表そうと、
優しく、突き刺さる。
そのまた上部、たくしあげられたカーテンの奥から、
ビニールの上に描かれた女性のイメージが現れる。
ビニールだから、勿論背後は透けていて、
手紙を写真撮影し、それをプリントアウトされた用紙が透けて見える。
他にもビーフジャーキー、犬の写真らが添えられ、
何者かの存在を知らせる、ヒントを担う。
シロヤマカナさん
天井部から足元にかけて、
広く空間を使用し、作品展示をされているシロヤマさん。
選択されたモチーフの数々は、単にイメージだけでなく、
その色味にも注意を払っている印象を受けました。
椅子を布を巻き、衣類のように、
外部へ肌を晒さぬように、暖をとるように。
外側全体が布で覆われていると気付くと、
それが祭壇のようにも見える不思議。
お供え物は、マッチ、脱け殻、電球、植物、煙草...。
それらは備える目的では非ず、
ただ、単に、そこにおさまっただけかもしれない。
それくらい無機で、温度がない。
そこにあるのだから人の介入と意図があったはずなのに。
足元に散らばった手紙入りの封筒や、
文庫本「カナの結婚」の切れ端。
そして描かれた山間の風景が、布に覆われ、
そして緩慢な糸の向こう側に見える。
届きそうで、しかし確かに遠い。
その思いを象徴するようなスケッチ。
佐藤 撫子さん
人間の体内の大半は水分、
そんなことを思い出させてくれる。
瑞々しくて、清涼感ある撫子さんの作品。
壁面部、ヴェールに縁取られるように、女性のイラストレーション。
他の生命体はと言えば、多数のシロクマたちである。
名刺も本も小さなボタンも花も、
物らしさを失い、風景の一部と化し、
シロクマたちの遊び場になってしまった。
彼らは勿論、文字も読めないし、文字という概念すら頭に無い。
触れた際の質感、温度、色の濃淡、線の揺らぎ程度のものではないか。
視界を上げれば、そこにもシロクマはいるのだけど、
地から少し離れたものたちは、くるんとひっくり返っている。
戯れているのかもしれないし、
死んでいるのかもしれない。
そんな人が作りしものと、
人ではないものたちの上、
掲げられた少女のモチーフ。
水面に浮かび、広がる波紋、気怠い表情。
彼女を神様と仮定して、
人が居なくなった世界では、
信仰してくれる、相手をしてくれる人がいなくなり、
こんなことになってしまうかもしれない。
暇とか、寂しいとか。
そんな人並みの感情だって生まれるかもしれない。
人類が滅びるっていったって、
シロクマたちにとっては知ったことか。
それはそれで平和、なんて一つの可能性のお話。
ももやまさん
衣類と作品が同列に並べられた展示空間。
絵画は衣類に影響を与えて、
衣類は絵画に影響を与える。
まるでクローゼットみたいだ。
描かれたのは子供達。
一人一人が異なる服をまとって、
異なる環境を生きるさま。
成人してから子供服を見ると、
こんなに小さな服が適当であった時期が、
皆にあったのだな、と驚く。
しかし、興味が向くのは、身体の大きさの違いだけじゃなくて。
自分の好奇心を真っ直ぐに信じて、想いを形にしようとする様。
真っ直ぐな想いは、時としてわがままに見えるかもしれない。
子供は、単に生きた経験と時間が少ないから、
比較したり検証するまで考えが及ばないことはあるはずで。
だからこそ、外部の手から逃れ、こんなにも良い表情を見せてくれる。
話は変わりますが、
吉田戦車の『伝染るんです。』を先日読み返して、
写真撮影時に「はい、チーズ!」と言われ被写体がカメラに笑顔を向けて、
「もういいよ!」って言われるまでずっと笑顔...というお話。
表情筋を笑顔と認識されるようにひん曲げただけである、
そこに意図はあっても、感情はちょっと違う。
そんなことをおもいました。
ゆさみささん
作品脇に添えられた手描きのタイトルがなんとも印象的。
写真のようで、しかし絵画的といいますか、
ちょっとおかしな空気感が詰まっている。
意図しているのかはともかく、
生き物達は何かを見通していて、
わかった上で、その表情をしているような。
青空と砂漠、そして遠くにヤシの木(?)
その景色の中を2人乗りで突き進む学生カップル。
これが若さ!
しかし、タイトルは寄り道!
えぐり取られた砂の痕跡。
彼の額に浮かんでいるであろう汗。
さぁ、彼は何を求め、ペダルをこいでいるのだろうか。
作品→タイトル→作品→なるほど!
...といったプロセスをふみました、私。
縦書きのタイトルから大喜利的な何かを感じ取ったかも。
改めてゆさみささんの作品を眺めて、
その表層にも内面にもネガティブさが見当たらないことに気付く。
かといってポジティブかと聞かれれば、首を傾げる。
ここで描かれた猿のように、
事態を素直に捉えている、ただそれだけなのかもしれない。
五名が考える神様が、
この一室に肩を寄せて集まっている。
しかし神様は何人いるのか?
単体を正確に切り分ける言葉が存在するのか?
自らを救ってくれるのか?
わからない、しかし、それで良い。
神様を形にする行為ではなく、
内なる想いが創造する神、
またはそれに類似した何かの欠片でも良いからと、
必死に手を伸ばす、そのさまこそが、
本展示会の姿だと考える。
信仰推進委員会『 それぞれの神さま展 』
会期:2016.4.29 - 2016.5.1
GALLERY SPACE : 304