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千彩 -chiiro- 『風吹頃~KazeFukuKoro~』


『風吹頃~KazeFukuKoro~』
千彩 -chiiro-
101-b:2015.11.2 - 11.8

石画、木画、布画、和紙画など、ありとあらゆる素材をキャンバスとして描かれたイラスト展示『風吹頃~KazeFukuKoro~』。
緩やかな曲線の美しさ、その根底にあるのは「和」の心でした。

大阪出身の千彩さんは古くからの「だんじり」がいつも日常にある地域に育ち、幼いころから身近にそこにあるものとして過ごしてきました。

この作品たちはそうした日本人の奥底に古くから根付く美的感覚に魅力を感じていた千彩さんがあらゆる素材に命を吹き込み、「和」を体現しているものとも言えます。


繊細な曲線美はまさに、木彫されただんじりをそのまま平面に落とし込んだかのよう。
作品はほぼすべて下書きはせず、ぶっつけ本番の勢いで描きあげているのだそうです。



立体的な素材に描かれたイラストには、そのものの芯から生命力をあぶり出されてるかのような印象を受けます。

古来、日本では森羅万象に八百万の神が宿るといわれ、遍くすべての自然物は崇拝の対象でした。千彩さんの作品からはまるでそれを可視化したかのような神秘性すら感じます。


漢字をモチーフに描かれた作品も特徴的。
ひとつの漢字からイメージを膨らませ、漢字を核として「線のしりとり」を繰り返すことでキャンバスに広がった画が作品のコンセプトを表現しています。


龍の和紙画は一つひとつのディテールがとても精緻。
髭や尾、背びれの部分からは千彩さんの作品の特徴でもある美しく滑らかな曲線美が見て取れます。


こちらは千彩さんが最初に制作した石画作品。
真ん中には『志』の文字が描かれ、それを中心として石全体を流れて行くようにひとつの画が広がっています。




こちらの三作はアクリルガッシュにより着色が施されていて色鮮やか。
カラーリングは時には筆で、時には手のひら馴染ませるように幾重にも重ね塗りされ、それ自体ひとつの作品として成り立つくらい美しくし上がっています。

ここまで紹介した石画作品に使用されている石は、作家自身が河原から拾い集めたもの。
幼少期からキレイな石を集めては実家に持ち帰るということが多かった千彩さんは、いまでもなお作品作りのため大きめのバッグいっぱいに詰めて持ち帰ることもあるそうで、余りの重さに身体が持って行かれそうになることもあるという苦労話も聞けました。


着物までもがキャンバスとなり、一つの作品として展示されています。
普段から着物を嗜む家庭に育ったこともあり、着物もまた『和』の象徴として身近に存在するものだったそうです。

お話を伺っていると幼な心に不思議と魅力を感じただんじりや石ころ集めから着物に至るまで、幼少期に感じていた初期衝動的な感覚が、歳月を経て作品作りに生かされているのだということがわかりました。仰々しく言えば、今回の作品展は千彩さん自身の集大成とも言えるでしょうか。

本格的に作家活動を始めたのは昨年からということですが、その実根底にある『和』の心は昔からそこにあったもの。それを体現した作品たちに、説明の出来ないエネルギーを感じました。

【出展スペース:EAST 101-b】

DF STAFF isaka