『言ノ葉展』
まうらさん、星野ゆかこさん
「言葉」をテーマにした和風二人展
WEST : 1-B にて開催中
会場に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、
まうらさんが制作された切り絵の作品。
切り抜くこと、留めることの連続で、
複雑かつ、奥行きのある画面が構成される。
「 きのこここの子 」まうら
-あなた、どこの子?-
そんなに身長が高くない彼女が、
自身よりもっともっと小さな町と小さな住人を見つけた。
住人たちの住居の屋根がその手のひらで覆えるくらい。
彼らをぎりぎり口に放り込めるくらい。
巨大な相手には恐怖を覚えることもあるだろうけど、
表情も見えない彼らが手を振る様、口元の開きを見るに、
大丈夫、仲良くやれる。
「 さようなら 」まうら
-左様なら、なら、サヨウナラしてはいけない。-
作品脇に添えられたその言葉が気持ち良い。
皆、複数の別れの言葉を知っている。
どれを使うか、どれが好ましいか。
ばいばい より さようなら が好き。
より鋭利な響きを感じるから。
その手を離せば、肉体の接触はさようなら。
また、二者の間にあった点線にも鋏が入る。
さようならを呟く瞬間に、失われるものを
この作品の中から探して欲しい。
「 2015 」まうら
-どの世界にでもきっときっと行けるはず。-
羊の姿を見つけた、2015年の干支である。
暖かそうな毛をまるっとリボンで飾り付け、
このまま誰かにプレゼントしても良い。
すぐ脇にいる少女にも羊の角が生えているようだ。
衣装のパターンやプリントも、新しい年がやってきたことを
喜んでいる。
「 うつくしい 」星野ゆかこ
-世界はとても残酷で、無慈悲で、理不尽だけど。-
その言葉の続きを描いた、星野ゆかこさん。
幸せであり続けたいとは思うけども、
幸せのみに囲まれたら全ての感覚は狂ってしまうのだろう。
彼女が作品の内側で置かれている環境、境遇は、
目には見えないけども、
乗り越えた先はとても愛しいものであったということ。
恐らくでしかないが、
その感嘆の声は、心の声であると思う。
「 欲 」星野ゆかこ
-千春は、竜神への贄でした。-
小さな色紙に描かれた二人のキャラクターと、
物語を綴る8行にわたる言葉。
絵を見て、物語を読むを交互に繰り返し、
その構造がライトノベルを読む感覚に近いなと思った。
それぞれ1枚の画を元に、
私たちの頭の中で、表情の変化や声の響きを想像すること。
「 彩 」星野ゆかこ
-やさしくて、とってもあったかい、とてもとても綺麗な君の色。-
地から切り離され、
限りある命を更に縮められた花。
両手でしっかり握りしめ、
誰に手渡している最中だろうか。
受け取る側の男性の手の色は冷たい。
色から想像するのは、先の短い命のこと。
誰かに手渡すならば、花を切り取る必要があって、
またその花の命を少しでも長くつなぎ止める為に、
たっぷりの水を与える。
それが滴っているように見えた。
先が、終わりが近いと思うからこそ、
溢れんばかりの水を注いだ、と。
まうら/星野ゆかこ 『言ノ葉展』
会期:2015.3.13 - 2015.3.15