ベルギー出身のアーティスト
Anneleen De Causmaeckers 氏
燐光(りんこう)を利用したインスタレーションを
WEST : 2-C の一室で公開中
燐光とは、物質が光を発する現象/発する光のことを指す。
今回、扉で仕切ることができるスペースを選択したAnneleen氏
扉には、日本語/英語に訳された "手順" が貼り付けになっていました。
" 2人以内で部屋に入ってイスに座って下さい
ドアを閉めて明かりを消して下さい "
至ってシンプルな言葉で表現された手順。
続いて、室内をご紹介致します。
8.2㎡ 程の広さの部屋。
白色の線、白色の糸が四方から伸びて、
空間を柔らかく充満させている。
壁にまで到達した細い糸は、
壁に刺さった細いピン針と結ばれる。
これっぽっちの出来事が、
この後ご紹介する情景を作り上げることになる。
さぁ、備え付けられたイスに座って。
ライトのスイッチをOFFにしよう。
この光は落とされる。
OFFになった。
部屋は暗い。
普段なら僅かばかりの外光が差し込む隙間さえも、
目張りされて、光は出入りできない。
残された光の入り口はここだけ。
先程閉めたドアの下。
一方方向から差し込む光が、
部屋を遠く僅かに照らす。
見えますか?
白色の線、白色の糸。
長時間露光(露光時間30秒/ISO6400)しても、
カメラだと捉えきれない。
肉眼で、その目で、身で体感しなくてはならない。
コントラストを目一杯上げて、補正を加えた写真がこちら。
緑/黄緑色に光る、細い線がお分かりになるでしょうか?
これが、先程ご紹介した糸です。
勿論、肉眼とは全く異なる見え方ではございますが。
このように、線がぼーっと鈍く浮き上がる。
光を当てれば、接した部分は光り、
代償として黒い影を壁に残す。
このプロセスとは異なる方法で、
糸は自身の存在を残そうとする。
無数の針と糸とで紡がれる、
機械を通じては体験することのできない、
生き物の為の情景。
ベルギーのゲント出身のAnneleens氏
「30年前にご自身が生まれた場所、ゲントの空の状況」と「昨日の東京の空の状況」
この二つを今回の作品に落とし込みました。
用意された二種類の文字羅列は、観測地点を示す座標でありましょう。
展示スペースに置かれた二脚の椅子がそれぞれ、
ゲントと東京の座標となる。
同じ部屋で同じ物を見ていても、
少し、位置がずれるだけで見え方は違ってしまう。
私たちが持つ、物の見方を変える。
ゲントと東京の情景は、私たちが見ている情景の全ては、
同じ物、繋がっている、ひとつなぎのものであることを。
やさしく、伝えてくれる。
10分程に満たない、貴重な経験。
ホームページでは過去に制作された作品も紹介されています。
是非、併せてご鑑賞ください。
(ぱんだ)