多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻2年に在籍中、
石井雪乃さん、霧生まどかさんの2人展。
石井雪乃さんに引き続き、霧生まどかさんの作品をご紹介致します。
それでは、重厚な版画作品の一部、ご覧下さい。
今展示では、油絵、版画、ドローイングを多数展示。
「食すこと/口にすること」に強い興味を抱いている、と霧生さん。
実に日常的、誰もが密接に関わるテーマであります。
しかしながらアウトプットされた作品は、咀嚼と消化の過程を経て、
非日常を装っている。
丹念に描き込まれたそれらはリアリティを追求する為ではなく、
より質の高い異物であろうとする想いの結果であるように思えます。
霧生さんは、日常を求めて非日常を描き出しているのかもしれない。
「 食卓 」
色彩を失い、情報に飢えるの観者は、
作品内部の情景から手探りで、不格好な物を拾い上げて。
それに名前と意味を与え、物語を推察することでしょう。
食卓、平たい白色の皿に寝転がるのは、
人のようで、広い意味で食べ物のようで。
生きる為に何かを口にする。
穀物、肉、野菜。
口にする物は、既に生を絶たれているか、もしくは今から殺される存在であります。
食品加工を経ていれば、もう原型など留めてはいない。
今日私たちは何を食べただろう。
今日私たちは何の死体を口にしただろう。
呼吸をするように、何を口に放り込んだのだろうか。
「 過食症 」
リトグラフ/1000×750mm
大画面に詰め込まれたモチーフの数々。
驚く事にエスキース無しでこの画を完成させたというのです。
内に籠り、描き続け、過程の記憶/意識は曖昧であると仰ってましたが、
その状態から、思考をここまでクリアに定着させるとは。
特にこの作品に関して、言葉を添えるのは野暮ってもんです。
とにかく、そびえ立ち、脈打つ巨塔に対面してみて欲しい。
壁面の下部に配置された今作品は、
観者の胸、消化器官の辺りに位置していて。
私たちの対応する器官をえぐりに来る。
この形状を作っているのは微細な線の集合であります。
作品に近づいても/離れても逃れることはできない。
「 過食症 」という生理的に顔を背けたくなる題に向き合い、
見事描き上げた今作、必見です。
胸から食物がせり上がろうとする感覚。
食物が逆流して、体内の管の側面をこそぎ落とされる悪寒を、
鑑賞によって。
本当はもう一点、木版画をご紹介しようと思ったのですが、
会場でご覧頂きたく思います。
出し惜しみと言いましょうか、是非、現物を体感すべきだから。
展示期間/ 01月22日(日) ~ 01月25日(水)
WEST : 1-C
(ぱんだ)