三人のカメラマンによる写真展『クワイエット』
最後はミサト ウチコシさんの作品をご紹介します。
一際眩しかった、ミサトさんが撮影された写真達は。
照射された以上の光を観者の目に注いでいたと思う。
撮影されたのはなんてことない日常風景なのだけど。
きらめいていたから目を細めたくなりました。
壁にマスキングで止めてあるだけ。
なのに、集合したら陽だまりになって。
多くの人が見たことある風景。
ありふれた風景。
モチーフは静物だから、そこに表情はありません。
顔が見えたとしたらそれは、
カメラを覗き込んでいる人の表情でしょう。
思い入れは、時間をかけて紡ぐもの。
友人や恋人や恩師を残しておきたいという気持ちは必然です。
でも、ここにある写真は思い入れが引き金ではないと思う。
その瞬間の情景が引かせたのでしょう。
想いが発生したとしたら、その瞬間。
そして、現像されてから、写真に乗っかるのです。
引き潮みたいに。
僕が一番好き写真はこれ。
何が映っててもいい。
朝のまどろみから抜け出して、
視界をこじ開けたとき、最初に飛び込んでくる
それがこの情景だと思った。
見えないからいい、重くない。
抱えなくていい、羽みたいについてくるだろうから。
舐めかけの飴玉。
固まっていた状態に、舌を這わせて、
溶け出して、ならされて、
不器用にも、二つが一つになろうとしている。
繫ぎ目をなくそうとしているみたい。
彼女の作品には甘みがあります。
でも周りを引き寄せるような香りを放ってはいない。
自ら近づいて、手に取って、口にした人だけが味わえる。
甘い物が苦手な僕だけど、好きです、これは。
ぜひ、ご鑑賞ください。
展示期間は 1/19(木)までです
(ぱんだ)