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加茂 茜


EAST : 302 で開催中
刻刻な虫 『4:00~11:00~13:31~16:00 展』

今回は、加茂 茜さんの作品にクローズアップしたいと思います。
丁度、在廊されていたのでお話した内容も交えて。


予備校に通いつつ、芸大を目指しているという加茂さん。
メインは油絵でありながら、ユニークな立体作品も制作されています。
機能性、無機質、という言葉を念頭に、
一部、ご紹介します。

「QR」

四角を基調とした模様の組み合わせが、
変換機を通すことで、異なる情報に変換されるQRコード。
この作品、加茂さんはQRコードを直角から解放し、
よりアナログな状態に置き換えました。
キャンバスの上に突起する情報の子種。
平面的な色の有無が全てだったコードは、奥行きを与えられて、
人の皮膚のようで。

白黒四角形の簡潔な美しさは埋もれてしまったけど、
かつての姿は確かに、この下で眠っている。
コードにおいて、種が宿った土とは何だったのか。
成れの果て、コケのように広がる鮮やかな何なのか。

本来の機能から意識が切り離されそうな感覚がたまりません。

「スポンジと針金」
「隙間の錆」

上記二点はポートフォリオに掲載されていたデッサン画。

顕微鏡で覗いたかのような近距離で、
素材/対象の性質を考察をする。
この視点に僕は鷲掴みにされました。

加茂さんの作品は鑑賞を通して、
描かれた対象の細部に興味を抱かせてくれる。
物質的な細部に。
精神的な深部に。

「スイッチ」

スペースに備え付けの照明スイッチ。
…の周りにペイントされたスイッチが佇んで。
実は、こちらも加茂さんの作品。

マットな色合いがかわいらしくて、
自宅が同じ型のスイッチだったら、着せ替えてしまいたい。


日常の中にも「スイッチ」を押すという瞬間は沢山あって。
別に、それは楽しいことでは無い。
何かが稼働したり、光が灯ったり。

それは押すことで達成されること。
でも、この作品は、鑑賞の時点で何か満たされる感覚になる。
コードはどこにも繋がっていないから、
スイッチを押しても何の仕組みも動かない。
でも、押した自分の何かが切り替わる音がする。

「カチッ」っと。

やられたとなと思います。
これ、大好きです。
テーブルの上には、ピンポンチャイムもございます。
共に販売中でございます。


無機質なものに惹かれる、
人物、生物にあまり惹かれない 。
そう仰った加茂さん。

確かに、それはもう人々の手から離れてしまっている。
でも、かつては人の手の中にあって、人が始まりを作った。
廃墟も金属も物質全般において。
だとすると、ここでの無機質という言葉は、
誕生までの一連の流れの中に存在する空虚のことであるのか。

柔らかい思考をお持ちなのですよ、加茂さん。
だから、思考の深みに誘われて、ゆっくり長居をしてしまった。

皆様も是非、ご覧下さい。

http://kamokamo.cj3.jp/gallery

(ぱんだ)