東京藝大彫刻科2年有志
『20世紀あかちゃん』
2021.8.30-2021.9.5[EAST 102]
東京藝術大学彫刻科に在籍中の5名によるグループ展が開催中です。
90年代後半から2000年代にかけて生を受けた彼らが見たノスタルジーとレトロ。
自分たちの経験によるものから、生前の時代の文化まで、それぞれが感じる昔懐かしいものが立体作品で表現されています。
一部となりますが展示の模様をご紹介いたします。
増田 充高
スペース内で一際目に留まる真っ赤な関取像。
木彫りで丁寧に力強く彫られたお相撲さんは、太くどっしりとしたまわしを身につけていることから、横綱であることがわかります。
小ぶりな立体作品ではありますが、横綱の気高さ、そして真っ赤な着色からその気迫まで再現されているかのよう。
そしてもうひと作品もまた武道をモチーフにされています。横綱とは対照的に、デフォルメされたフォルムがとても印象的に表現されています。
あえて誇張された肩幅、角刈りなど、全体的に矩形が強調されており、その武士道のまっすぐさを表しているようにも感じられます。
山田 歩
高く積み上げられたゲーム機とゲームソフト、そしてその上にはスティーブ・ジョブズと思われる人物が立っています。
ゲーム機は全て2000年以降に発売された機体で、彼らが幼少期に触れ合う機会の多かったものばかり。
そのゲーム塔を征するかのように立つジョブズの像は、テクノロジーの一大改革を成した象徴とも取れるのでしょうか。
《proof》というタイトルから、この作品からどのようなメッセージを感じ取るでしょうか。
畔野 健太
少年少女時代、怪獣や特撮モノに触れる機会も多かったですよね。
中でもこちらの作品は昔ながらのヒーローと怪獣がモチーフになっているような懐かしさも感じられます。
あえて塗装されていないような単色の立体は、眉や目、衣装のラインなど、立体そのもののディティールに細かく注目でき、その精巧で丁寧な作りに圧倒されます。
そしてこちらの怪獣が乗っている展示台は、マニアックな漫画やグッズがひしめく有名店の段ボールで、シニカルさと遊び心の両方が感じられます。
愛 來张
彫刻科といえど、立体表現全般を学ぶ場、ということで柔らかい素材を使用した作品も。
布をメインに、ふわふわとした生地で制作された赤い心臓のようなモチーフは《愛しさと心の壁》という作品。
愛情という抽象的な概念と、壁という硬さと距離を感じさせる概念を、あえて柔らかい素材で表現されていることで、互いの儚さや脆さ、もしくは温かさといったものが感じられるよう。
さらに、刺繍で作られた布のZINEも実際に触って鑑賞することができます。具象的なモチーフから抽象的なラインまで、糸で縫われた繊細な心模様が感じられます。
笹部 泰生
白とグレーをベースに、赤や黄、緑といった目が付いた少し奇妙な顔の立体。
こちらの作品のタイトルは《カラーひよこと現実味》というシリーズ。
作家の笹部さんは、もちろんカラーひよこブームを経験していない世代。あえて人面を使用することで、何か居心地の悪いような、どこか違和感を持ってもらいたいという意図があるのだそう。
消費社会の負の象徴のひとつとも言える、社会的にも問題となったことは有名なこのカラーひよこ。その「知らない文化に対する憧れ」というものを、当時の色味を彷彿とさせるようなカラーリングで表現されています。
このひよこたちの瞳から、あなたは何を感じるでしょうか。
本来、この時期は学祭の季節。
本年もオンライン開催という形となってしまい、対外的な展示の機会が減ってしまったのだそう。
特に立体作品は、画面越しで見る印象と実際に目で見る印象が全く異なるジャンルです。
だからこそ、実際に外で色んな人に作品を見てもらいたい、という気持ちから発せられた展示会となっています。
立体の奥深さをそれぞれが切磋琢磨し、探求しながら、楽しみながら苦しみながら制作されている様子がありありと感じられる、穏やかでクールな空間です。
是非間近でじっくりと作品との対話を楽しんでみてください。
本展は8/5(日)まで。
参加作家
増田 充高
instagram:@michitaka_masuda
山田 歩
instagram:@yamada_ayumu
畔野 健太
愛 來张
instagram:@i.raichang
笹部 泰生
instagram:@felix_9441