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【展示レポート】talk to <抽象表現展>part1


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talk to <抽象表現展>

会期:2021.7.11(日)〜2021.7.18(日)8日間
会場:DESIGN FESTA GALLERY EAST 302

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7月11日(日)より、デザインフェスタギャラリー原宿では「抽象表現」にフォーカスした公募企画展《talk to<抽象表現展>》を開催いたします!

特定のモチーフを描く具象表現と違い、焦点の定まらない表現の形。
マクロにもミクロにもなりうる、変幻自在に伸縮する可能性。
そこに描かれているものが何なのか、作者は何を思い、何を表現しているのか。
そんな問いを鑑賞者の中に喚起する(=語りかける)ことで、両者の間には静かなる対話が生まれます。

雄弁に、またときには寡黙に、そこに在り続ける。
「なんとなく、そう見える」。それだけで、じっくりと眺めずにはいられない。
見方は人の数だけあり、作る側も見る側も、際限なく想像を膨らませます。

本展示には抽象表現を軸に作品制作をする11組の作家の方々にお集まりいただきました。
こちらのブログ記事では 《talk to<抽象表現展>》に出展される作家11組中6組をご紹介します。

[A]いちかわりく
[B]高橋 梨紗
[C]haRumi/.
[D]wanaco**
[E]mym.
[F]大山マリカ


[A]いちかわりく



普段はイラストレーターとして活動するいちかわりくさん。
今回のtalk to <抽象表現展>をきっかけに抽象表現に初挑戦したのだそう。

作品は青もしくは赤のモノトーンの作品。
図形や点、線を平面構成した作品が並びます。




モノトーンということもあって、画面にランダムに配置されたさまざまな形や、その配置が織りなすリズムがより強調され、とても軽快な印象を受けます。

抽象画といっても何が描かれているのかを見出そうとしたり、画面そのものの質感に注目してみたり、楽しみ方も数々ある中で、いちかわさんの作品は画面全体が奏でる軽快なリズムを楽むことができます。




前述の作品の一部を基地とったように見える横長の作品でも、よく見ると画面のなかで然るべき場所にしかるべきものが描かれていて、地の部分と図形や線の部分のバランスをみると収まりが良く、一定のリズムを持って配置されているということがわかります。



[B]高橋 梨紗



まるで顕微鏡の中を覗いて、ミクロな世界を見ているかのような感覚を覚える高橋 梨紗さんの作品。少し引いて見るのと、ぐっと近寄って見るのとでは全く違う印象を受けます。




遠目でみると一面がグラデーションのように見えていてえも、少し近くで見てみると画材のドリッピングの後やストローク、滲みで重なり合う色など画面いっぱいに違った表情が垣間見える作品。

偶然性をともなって出来たものと思いきや、さらに無造作に描かれた点や線、微生物のような物体などがとても小さな世界を構成しているように見えて、見えている以上にスケール感があります。




平面作品だけでなく、立体作品も抽象的な形をしたものが並んでいます。
高橋さんの作品は大枠では抽象的なアプローチの作品ではありますが、その中には存在していないであろう微生物のようなモチーフが登場します。
こちらの立体作品は、そのモチーフが画面から現れているような作品群です。何とも形容しがたい、決まり切った形もないという部分では、抽象的なオブジェクトと言えるかもしれません。



 

[C]haRumi/.



抽象画での出展は初となるhaRumi/.さん。
このtalk to <抽象表現展>では、自己の内面を形に残すようなコンセプトの作品を展示されています。




こちらは「躁とうつ」という作品。
この作品を基軸として、周辺のいくつかの作品が展開されています。

相反する概念、そして形に具現化するのは難しい二つの概念を、相反する色で表現していて、静かな中にも相克するように画面に現れています。




そしてこちらが「躁」「うつ」をそれぞれ別個のものとして表現した作品と、二つが混じり合った感情を表現した作品。

一色のみにも様々な表情がありますが、一色のみだからこそトーンで感情をダイレクトに表現しています。またその二つが混じり合った「混沌」という作品が黒で表現されていることも象徴的です。

https://www.haru444.com

[D]wanaco**



DFGでは初の個展以降、徐々に抽象的表現に傾倒し進化を続けているwanaco**さんの作品。
これまでは音楽など外的なインプットから動きのある作品を制作してきましたが、近年では静かで内省的な表現に変わりつつあります。

今回の作品は「物質そのものとしての絵画作品」に、より重きを置いている作品が並んでいます。




一つひとつの作品を見せるというよりは、スペース内で大小入り混じった作品を使って一つの世界観を作り上げているような構成となっており、こちらはその核となっている作品です。

どこかの景色を俯瞰しているようにも見えるし、反対にとても小さな世界を拡大して見ているかのようにも見える。もしくは目に見えない自身の内側を描いたものなのか。たくさんの想像の余地がある、まさに可能性が伸縮するような作品です。




近くで見てみるとより重厚感があり、幾重にも塗り重ねられ、それが多面的な表情を作り出しているということがわかります。

途方も無い時間をかけて構成される地層のように、見えない部分の気配も見え隠れしています。もともと色を操ることを得意としている作家さんではありますが、本作はニュアンスの出し方によって従来以上にさまざまな色が染みてくるように入ってきます。
仮に完璧に近い形でスキャンデータを残すのなら、とてつもなく大容量になりそうな、それほどの情報量があり、モノとしての存在感に静かに圧倒されます。





[E]mym.



DFGでは2017年、2018年と個展を開催したmym.さんの作品。
濃淡のはっきりした色遣いで締まった画作りが特徴的です。

ペインティングナイフのものと思われるストロークと掠れで構成された絵画からは、確かな息遣いが感じられます。




作品にはこのように、刺繍糸によって直線が描かれている部分があります。
使われている画材の色を抽出して、同色の糸でパネルを縦断もしくは横断するように直線を描くことにより、緩急がついているような印象。

画材の生の質感に比べるとは対照的に、無機質とも思えるこの部分があることでぐっと作品が引き締まって見えます。




絵の具の滴はそのまま、自然の流れに任せて痕跡が残っていて、
混じり合った部分にさまざまな色が見えてきます。
緩むとこは緩める、締めるとこは締める。
緊張と緩和が一つの画面で同居している、さまざまな側面を持った作品です。



[F]大山マリカ『さかいめのない世界』



大山マリカさんはスペースいっぱいの大作を展示。
継ぎ接ぎされた布やパネルが一体になって、思わず息を飲んでしまいます。




テキスタイルをベースにさまざまな素材を駆使して作品を制作し、ときにはそれを身に纏ったパフォーマンスも行う大山マリカさん。本作「さかいめの世界」では継ぎ接ぎされたように見えるそれぞれの支持体の境界線や、布、紙、画材などの物質間の境目が混じり合って一つとなっています。

特に社会生活を営む上で避けては通れない人間関係の摩擦は、両者間に存在する境界線がそれぞれに存在しているからこそ起きうるもの。境界線や輪郭が曖昧になった作品は、前提として存在する「線」の存在をなくすことにより、「摩擦で傷つくことのない世界」を表現してみせています。




細かく切断された布が幾重にも重なり合って、絵の具が生々しく表出しています。
たくさんの要素が無造作に溶け合うように混じり合い、境界線を引くことはできません。
まさに「さかいめのない世界」が広がっています。



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 【展示レポート】talk to <抽象表現展>part2 はコチラ 

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[使用スペース EAST 302]