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サカキバラハナエ 『生きる場所、変わる部屋。』



サカキバラハナエ
『生きる場所、変わる部屋。』
2021.2.20-2021.2.22
at WEST 1-C

写真のプリント技法のうち、もっとも古典的といわれるサイアノタイプを利用した作品を中心に制作活動を展開するアーティスト サカキバラハナエさんの個展がWEST 1-Cで開催中。

手作業で作られた生の質感が伝わってくるプリントが展示されています。



近代的写真技法が生まれる以前の19世紀半ば頃に発明された、サイアノタイプというプリント方法で作品制作を行うサカキバラハナエさん。

銀塩写真において、暗室で専用の機器(引き伸ばし機)を利用して、ネガを印画紙に投下することで露光するのに対し、サイアノタイプはネガを印画紙にあてがって日光にさらすことで露光し、専用の薬品による化学変化で像を浮き上がらせます。

古典的な技法ゆえその仕組みはシンプルで、その特徴的な青の発色や作品制作において自然の力を頼るという工程から、写真家のみならず現代美術の世界でも採用されるプリント技術です。




今回の展示タイトルである『生きる場所、変わる部屋。』では、サカキバラさんが上京してからこれまでの約2年余りの間に、生活拠点となる部屋をテーマにした作品群で、4つの要素で構成されています。

順路に沿ってはじめに目に入ってくるのは、「HOME」という作品。
ここに並ぶ写真は自分自身や自分の過ごす部屋、ともの長く時間を過ごしたご家族との写真など、自身にとってごく身近な存在が写し出されています。

薬品を紙に添付した痕跡がそのまま残り、青のモノトーンで像が写し出されるサイアノタイプは、なんだかおぼろげな記憶の中を覗き見ているような感覚にさせてくれます。




その向かい側『frame』という作品では、自家プリントした写真に陶器で作った額が重ね合わされてディスプレイされています。

ここにある写真群も、日常の見過ごしてしまいそうな場面を記録した写真が散りばめられています。自室に溜まったたくさんの写真を整理している時のように床置きにされた写真からは、当時の光景がありありと蘇ってくるようです。




こちらの作品ではご友人が撮影したサカキバラさん自身の写真をが飾り棚正面に掛けられ、スピーカーからは制作時の二人の会話が聴こえてきます。

この会話は、目の前の写真がプリントされる過程で生まれたもの。
その合計20分近くにもなる音声に耳を傾けつつ写真を見ていると、当時の光景を追体験しているような感覚になり、数カットの写真に没入して行きます。

二人の関係がどうやって始まったのかという雑談から始まる会話は、プリントを仕上げていく上でのコミュニケーションへ展開して行きます。その一部始終を聴きながら写真を見ていると、この静止画が映画やドラマの場面写真のように、リアリティーを感じるものに仕立てあげられます。



コロナ禍がなければ、作家本人によるサイアノタイプのワークショップも予定されていたとのことですが、在廊されている際はプリントの工程や作品のコンセプトなどをご自身から伺うことができます。

難しい状況下ではありますが、お近くにお立ち寄りの際はご無理のない範囲で足をお運びください。

展示は2/22(月)まで開催中です。



<スペース詳細はこちら>

[WEST 1-C]