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Tom Cude 『Ushimitsudoki』



Tom Cude
『Ushimitsudoki』
2017.12.11-2017.12.14
at WEST 1-D

丑三つ時=「丑の刻を四つに分けた第3にあたる時。今の午前2時から2時半ごろ。一説に、午前3時から3時半ごろ。また転じて、真夜中。深夜」

東京の眠らない街の表情を異国の視点から捉えたストリートスナップ。
そこには普段この大都市に暮らす私たちですら気づかない物語が繰り広げられています。





本展は最終電車がなくなる午前1時頃から始発が出る午前5時頃までの東京の繁華街の様子を作家が収めた一連のシリーズとなります。
壁面には主に渋谷のストリートスナップが展示されており、時系列はバラバラ。

あくまで俯瞰的な視点で捉えたそれらには、この時間、そしてこの国特有の街の表情が映し出されています。

異国の人であるTom Cudeさんがこの時間帯の東京の街を目の当たりにして抱いた印象は「安全」。他のどの国とも違い、世界でも有数の治安の良さを誇るこの都市が深夜に見せる表情は彼の目にはとても特異に映り、このプロジェクトを始動させたと言います。




同じ構図で全く異なるシーンを収めた一連の写真。
前景と後景の割合がほぼ一致しているこのコンポジションはSaul Leiterを彷彿とさせます。実際に話をしてみると、今年開催された回顧展を観賞し、少なからず影響は受けているとのこと。彼が東京を撮ったらどうなるかとても興味があるとも話してくれました。




対面にも比較的マクロな視点から街を捉えた写真が並びます。

自動販売機で飲み物を買うどこかの作業員、飲み会帰りと思しき男性グループ、客引きの最中に談笑する女性、四方八方に行き交う人の群れ、などなど。人々が何にも怯えることなく深夜の街を闊歩する姿はたしかに、他国では考えられないものかもしれません。

そういった視点で捉えたこのシリーズには一枚一枚にドラマがあって、まるで映画の群像劇を観ているかのようです。




ブック作品は壁面に並んだ写真群を観てからページをめくって観て欲しいとのこと。
左ページにはランダムにセレクトされた古事記の一節、右ページにはよりミクロに捉えた深夜の街の姿が時系列に並んでいます。

写真と古事記の組み合わせには特別な関連性はありません。むしろランダムにあてがわれたそれらが組み合わさり、何か新しい意味が生まれたら面白いだろうという作家の試みなのだそう。


「草木も眠る丑三つ時」とはよく言ったもので、この一節を枕詞に数多くの不可思議な民間伝承が日本には伝わります。日々の暮らしの死角で豹変する街の姿は、そんな寓話になぞらえることができるかもしれません。


【使用スペース:1-D】
author : isaka