田代 葵 『Self-portrait』
2021.4.6 - 2021.4.11
[ EAST 302 ]
織って作品を作られている田代 葵さん。世界の織物は様々な種類があり、伝統工芸として受け継がれています。田代さんは、そんな織るという作業を工芸品を作るためではなく、セルフポートレートを作る手段にしています。
どのようなセルフポートレートにするか。表現方法を模索していく中で、自分の内側から出てくる想いや感情を形にするのではなく、外から見た時に形取られる自分を作品にするよう決めたそうです。その時にふと思いついたのがレシートの存在。レシートは自分の行動を記録した言わば日記のようなもの。そのレシートという存在を素材に選び繰り返し織っていくことで、自分という存在を表現しているのです。
高さ1mを超す大きな作品が並んでいます。ラグのようにもこもことした表面はテキスタイル雑貨と同じテクスチャーですが、アート表現としての織物ならではの感動が随所に散りばめられています。
近くで見ると、紙を一つひとつ撚って繋いだ紐が規則正しく織られています。これが自分の生活の記録を繋いだ一つの形。一つの記憶、人生の中の1日はもしかしたらとても些細なことばかりかもしれませんが、その積み重ねが今の自分を創っているのだと、田代さんの作品が視覚的に教えてくれるのです。
全て手で織って作品を作られているのですが、その行為はやはり効率的ではないそうです。しかし、織物というものは手を動かした分がそのまま形、量感となって現れる。織っていた時間というものが自然と作品に反映されているのです。
こちらの作品は、紙を染色するところから制作されているそうです。紙のしわや裁断方法によって染色後の色の入り方が変化し、複雑な濃淡となって表れています。
こちらの裁断方法は、手で破って毛羽立たせたりしているそうで、全体の雰囲気が柔らかい印象になっています。
以前は糸を使用して制作されていたそうですが、こちらの作品は紙を素材にセルフポートレートを制作し始めた初期のものとのこと。チラシを貼り合わせて作られているようで、その理由として、自宅に届くチラシは地域性や自分の生活に関係する内容のものが届くため、自分という存在を形取るための素材に適していたため選ばれたそうです。
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staff:Chi