揺れ揺らぐ
2021.1.4-2020.1.8[WEST 1-D]
DFGの、記念すべき2021年初展示となりますのは、同じ学び舎でそれぞれの技術を磨かれている学生さん5名によるグループ展示からスタート!
「歪み」を共通テーマに、制作ジャンルがそれぞれ異なる5名が紡ぎ出す世界観を是非お楽しみくださいませ。
ヒラメイカ
力強いモノクロの作品が目を引くこちらの作品群を制作されたヒラメイカさん。
全て筆ペンで描かれておられ、なんと全て下書きなしの一発描きなのだそう!
水墨画ともペン画とも違う、筆ペンならではの筆の均一な濃淡は、余白とのコントラストを引き立たせ、より視覚的に力強い作品です。
余白をゆったりと使った作品から、緻密に緻密に丁寧に線を乗せられている作品まで、近くで、少し離れて、様々な距離感でご鑑賞くださいませ。
妃奈村すれ
人間関係や、概念的な部分から「歪み」のテーマに挑まれた妃奈村すれさん。
目から涙をとめどなく流している少女や、ハートが溶けて滲んでいるような描写まで、心の繊細な部分が切なく描かれています。
中でも目に留まった作品がこちらのペン画作品。シンメトリーに並べられた少女は、髪と背景が対照的に描かれています。
お互いがお互いを意識しているような、一心同体のような、双子のようなルックスがまるで二面性を表現しているよう。
緻密に描かれた模様は、時間を忘れて見入ってしまいます。
鈴木佳乃
キャンバス上にぼんやりと浮かび上がる顔に、少しの奇妙さも感じられるこちらの作品。
こちらの人物は、AIで作成された人物像なのだそう。
布にこの顔を印刷したものを幾重にも重ね合わせ、縫い合わせ、布を縦に裂いたり、焼き付けたり、様々な加工が行われています。
デジタルデータであるAIの顔がアナログな方法で生成され、ぼんやりと浮かび上がる女性の笑顔は、少し不気味にも感じ、物理的にも「歪み」の世界観が感じられます。
彼女の正面に立った時、あなたにはどのような感情が流れ込んでくるでしょうか。
yuu花
デジタルとアナログ、両方の手法でみずみずしい世界観を描き出されているyuu花さん。
柔らかい配色でふんわりと描かれたアナログイラストは、美しさと儚さのような部分が丁寧に描き出されています。
そして個人的に吸い込まれるように見入ってしまった作品は、こちらのデジタル作品。
露に濡れた花嫁の瞳はまるでガラス玉のようで、滴る露もとても美しい。その透明感と、作品世界の切なさに思わず胸がキュッと締め付けられます。
儚く柔らかく、何より美しさに心奪われてしまう作品群です。
Lisa Doteuchi
昨年当館で二人展を開催されたLisa Doteuchiさんの作品からは、現実と非現実がまじりあうような、シュルレアリスム的世界観も感じられます。
今回出展されている4作品の中でも、画材や手法にそれぞれ個性が感じられ、実験的な部分も伺えるよう。
顔がぐるぐると渦を巻き、歪みが象徴的に描かれているこちらの作品は、よく見ると鼻や口のようなパーツも見受けられ、よりその奇妙さを醸します。
コロナ禍の真っ只中にいる混沌とした世の中、自分は何者なのか、そんなことを思い返させるような印象を感じました。
5人5様、制作ジャンルが全く異なる5名が作り出す「歪み」の世界。
2020年は、展示タイトルの通り「揺れ揺らぐ」この言葉に尽きる1年だったように感じます。
2021年、世間が明るくなるにはもう少し時間を要してしまう、そんな現実を突きつけられた年初め。
しかし、彼女たちの作品が物語る「歪み」から、希望への祈りのようなものさえ感じられました。
ゆっくりとした足取りで、是非じっくりとご鑑賞くださいませ。