多摩美術大学工芸学科 ガラス専攻/陶専攻
辰巳香さん、藤木志保さん
古田朱里さん、和田真実さん
四名のアーティストによる、「つる」をテーマに作品展示会
『 つるてん 』をご紹介致します。
「つる」は「鶴」ではなく「吊る」ですよ。
一度、カメラをズームアウト。
飛んでいる?いや、吊られているんだ!
ここは『 つるてん 』
様々なモノ、いきもの達が吊られる場所。
木と羊毛フェルトで作られた
辰巳香さんの作品。
重さのあるものが揺れた時だけに現れる形があり、
そこに吊るしたからできる変化があります。
揺れるものと揺れる為の場所、
この二つを兼ねた作品/展示。
ある程度の重さがあるときに、
吊る為の紐は綺麗に重力にならう。
振り子のように、規則を見せつつ。
吊られるにしても、いろいろな吊られ方がある。
漫画的(?)表現だとすると、
衿の部分に針をひっかけて吊ったりするけど。
この羊くんは、なんと自らの毛を犠牲に...
当の本人もびっくり仰天の様子である。
時間をかけて紐が伸び、地に近づくに連れて、
羊君は生まれた姿に近づくだろう。
吊るという行為から、私は花や食べ物を長持ちさせる
保存の力に興味を持ちました。
ご自身が「長持ちさせたい!」と思うものを
集めて、吊るしたのが古田朱里さんの作品。
使用した素材は、かすみ草、バラ、柳、キャンバス、ガラス。
『つる』というテーマを柔軟に利用していた。
壁を二面、橋を渡すように静止するキャンバス、
下部には瓶詰めにされた物たちが、
上部には寝かされた花たちがいる。
「 つる/吊る 」というテーマの中で、
寝かされている花。
食べ物を吊るし、長持ちさせようとする行為。
それはときに「寝かせる」と呼ばれたりする。
保存させる用途に加えて、
もっと美味しくなるように。
古田さんの作品は、大切なものをあえて草むらに隠し、
それを見つけてもらうこと/見つけられることの喜びを、
鑑賞される方と共に分かち合いたいのではないかと思う。
ひっそりと息をする。
かくれんぼをしているみたいな作品。
だから、鑑賞は見つけること、かもしれない。
心地よい丸い形をイメージして作っています。
パウダーガラスを溶かして制作された藤木志保さんの作品。
まるで、ドロップのようなガラス玉が、
頼りない木の枝に咲いている。
透過した光、遮った光の痕跡。
キャンバス地に残る影もが美しい。
ガラス玉、実り方が「つるてん」である。
これまた頼りない、細い針金の螺旋が、
かろうじて枝に絡み付き、吊られている。
しかし、重力に逆らうって、こういうコト。
延々と重力に逆らい続けるって大変なパワーが必要で、
沢山のもの達は、必死で逆らい生きている。
両手で必死に掴んでいるつもりだって、
この螺旋の絡まりのようなものだって。
ぶら下がる人をテーマに刺繍で表現しました。
軽い布は風が吹けばゆらゆらと揺れます。
見ていて気持ちの良いぶら下がり加減である、和田真実さんの作品。
藤木さんの作品と異なり、ぶら下がることに抵抗が無いというか、
容易に重力に逆らうことを可能にしている。
そんな印象はキャラクターの造形から感じ取れる。
漫画チックな世界観は、会場の中でも意表を突いている。
テレビゲームの中で、キャラクター達は、
自分の身長の何倍もの高さまでジャンプしたりする。
人間に例えるならば、とんでもない跳躍力なのだけど、
彼らの愛嬌をもって許され、受け入れられている。
会場の壁から壁へ渡された紐に手を伸ばす、
布と紐で描かれたとあるキャラクターの物語。
四名の作品が一室に集う中でこそ、
彼らの大活躍はより注目され得る。
最後に物販コーナーをご紹介。
手のひらに乗るくらい、小さな作品を買うことができる。
練り香水をおさめた陶器の器、
(あ、奥ではパンツが)
あまり見かけない、ガラスのハットピン。
瓶の蓋みたいなブローチなど。
装飾として付けたくもなるけど、
そのまま宝箱におさめておきたくなるアイテムたち。
展示会は本日、明日と開催中です。
心がちょっと軽くなれるよ。
ぜひ、ふらりとお越しください。
辰巳香 藤木志保 古田朱里 和田真実
『つるてん』
会期:2015.3.16 - 2015.3.19
(ぱんだ)