絵画で、写真で、空間で、歯車で
- 終りの國をつくる -
アーティストはムラセマナブさん、青猫さんのお二人
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深根固柢 |
はじめに、ムラセマナブさんの作品をご紹介致します。
たとえ話を一つ。
牛乳という言葉をどう表現するか?
「ぎゅうにゅう」「ギュウニュウ」「牛乳」「MILK」「ミルク」
近年のムラセさんの写真作品は「MILK」と「ミルク」の中間に近いと
勝手に思うのです。
日本人があえて日本語ではなく英語を使う感覚、
そして英字にするかカタカナにするか迷うバランス。
この距離感、この曖昧さが心地よい。
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偽庭/虚勢 |
もっと違う言い方を考えてみる。
ムラセさんが撮られた写真作品のモチーフは、
アイデンティティを喪失している そう、見えるのです。
花は花として在り続けるけど、
このフレームの中では、花は花の色/形をした何か。
モチーフの生気が抜かれている、ドライフラワー。
抜かれたものが生気だとして、それは消滅するのか?
いや、それは画面の四方に霧散するのだ。
それは豊潤な余白。
ミルクのように白く、清いのに先が見えない。
その喉ごしは、ムラセさんの写真体験に近いのだと。
今回、会場では部数限定で来場者側用にプレゼントがございました。
「DAYS for DAYS」(風景写真シリーズ)
写真とブックマークセット
この日の記念に、
続きまして青猫さんの作品をご紹介致します。
実は絵画作品の展示は初めてという青猫さん、
この写真一枚だけ見ても、貫禄ある作品並び。
人物を縁取る主となる輪郭線と、
その側に降り立った点の集合が作る陰影により描かれる。
情景は過不足なく、満ちている。
作品内部に登場する「歯車」は青猫さんにとって
重要なモチーフの一つなのでしょう。
歯車は何かしらを動作させる目的を持ち、
その突起を対象にかけて、くるくると回る。
上記作品では、この世界を進める為に歯車があるのではないか。
歯車に似たモチーフとして、車輪を挙げます。
でも、どうしても青猫さんの作品とは噛み合いにくい。
それは、人物と共に描かれる人物以外のモチーフと
歯車とが密接に関わり合う作品だからではないだろうか。
一つの歯車が複数の歯車を回す。
また額さえもが、歯車を持って起動する
装置であるということ。
そこに意思があるということ
青猫さんは絵画作品以外にも、
歯車を用いたアクセサリーも展示/販売なさっています。
ここでは「歯車」は独立し、抽出され、
大切に閉じ込められる存在であります。
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そこはかとない-壱-
( Re:Synchronicity )
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最後にご紹介するこちらの作品は共同制作。
ここまでお二方の作品をご覧頂ければわかるように、
お互いの懐にしっくりと収まる形/作品を
互いに提供し合い、構成されている。
ムラセさんは過去にも何度かミクストメディアを用いて
作品を制作されています。(過去の様子はこちら)
その度に、表情を変える作品は、
何時だって、相手に敬意を払いつつ、自身を立てる。
今展示は三日間のみの開催でしたが、
多くの来場者様にお越し頂きました。
残念ながらご来場頂けなかったお客様にも、
ブログを通じてお楽しみ頂ければ幸いです。
(ぱんだ)