去年とあるイベントで一緒になり、森さんが草野さんに声をかける形で実現した展示です。
森さんがコンセプトを考え、それを草野さんに話し、被写体が森さん、カメラが草野さんという分担で作成しています。
都会の片隅の公園で、一人ジャングルジムに興じる青年。紅葉と落葉具合から察するに季節は秋から冬、黄色いパーカーに赤い短パンのみと明らかに寒そうな青年だが、足元だけモカシンシューズ。まるでなにかのキャラクターのように「個性的」ではあるが「現実味」がない存在である。
人や物で溢れているのに、妙に無機質で人間の温もりが希薄な「東京」。そこにキャラクターのような「個性的」な人物を配置すると、逆に個性は消え、雑踏のなかでただ「異質さ」だけが浮かび上がる、というのが展示のコンセプトだそうです。
スクエアの中にジャングルジムを真正面から捉えている構図が単純に目を引きます。その後で、写真中央に写った奥の樹に気がつくんです。キャラクターのように現実味を失った「青年」ではなく、この写真の主役は中央の樹なのではないか、そんな風にも見えてしまう。
「樹海などに写真を撮りに行くことがあるんですが、東京に戻ってくると段々樹が減っていって、妙な気がするんです。都会のぽつんとある街路樹と、今回森さんが提示したコンセプトの都会でぽつんと佇む青年、その二つが自分の中で重なりました。」と写真を担当した草野さん。
無機質な都会に佇むキャラクターと、森から隔離された一本の樹の異質さは、確かに似通っていますね。
この写真も、コンセプトがストレートに伝わってきます。
渋谷の交差点で、奇妙な青年が渡っているのに、向かってくる群衆は誰も彼に注目をしていない。人の繋がりの希薄さがはっきりと表れています。
単純に「都会は冷たい」というのではなく、それを皮肉な目線でやや面白がっている、そんな風に感じられるところがこの展示の魅力かなと感じました。
被写体である青年を演じる森さんが楽しんでやっているように見えるんです。「もっと撮って」、写真から聞こえてくるのはそんな声。
そもそも草野さんは夜の風景を多く撮ってきた人です。光が少ないので、何時間もシャッターを開けっぱなしにして、やっと一枚撮る。ブランコや森、そして最近はトンネルを多く撮っているそうです。
「夜の風景は肉眼では暗くて見えないけど、時間をかければ写真には写る。そういう、現実とは違った異質なものが写ることが楽しくて夜の風景を撮るんです。昼(第一の世界)でも夜(第二の世界)でもない第三の世界の入り口を探しているんです」と草野さん
そういう「異質なもの」、「非日常」をテーマとしている草野さんも、今回の「都会の奇妙さと異質な青年」というテーマを面白がっていない訳が無い!
こちらは樹海で月の光のみで撮影した森の写真です。満月の近くを狙って、しかも撮影するための光を集めるのに9時間かかるので、一日一枚、そして一カ月のうち撮影出来るのは三日程だとか。
「夜の風景」へのとり憑かれ具合があっぱれです。
一方森さんはというと、絵画、演劇、パフォーマンス、インスタレーション、家族をテーマにしたコンセプチュアルな作品など、幅広いジャンルで作品を作っています。
どの作品からも漂うのは、皮肉と自己の存在(或いは他者から見られる自分)への問い。そういう扉を全開にして、是非私達に見せて欲しい。森村泰昌ばりのセルフポートレイトを千枚公開!!みたいな展示が見てみたい。いや、例えです、例え。 でも、そんな空想をしてしまうほどの、行き場のない情念をポートフォリオから感じるんです。
左から草野さん、森さん
スタッフNigelの「馬鹿写真下さーい」という一言による写真です!
森さん
https://twitter.com/mori_yu_suke
草野さん
http://www.creatorsbank.com/portfolio/?id=green_dawn
DF STAFF KOZUE
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Design Festa Gallery 原宿
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