24人の作家が作った時計が集まる部屋、EAST:301
壁面にかけられた時計達が時間を刻む音が響きます。
今回は何十にも飾られた時計達の一部をピックアップし、
ご紹介したいと思います。
時計の主な用途は、現時刻を知ること。
現在では、曜日、気温、ファッションの一部など
複数の情報を得られるツールともなっています。
そんな枠にとらわれない時計達が続々と登場します。
それでは、作品紹介に移ります。
「フラワー・ミーツ・ガール」
佐野 ゆかり
花をテーマに作られたこちらの時計。
花、葉、茎に抱かれた女性の姿。
彼女が掲げる一際鮮やかな花が起点となり、
時間を刻みます。
時を刻む花。
素直に美しいと感じました。
「日常に聴く」
渋谷 優里
時間と音楽とを取り上げた一作品。
僕も大学時代、音楽/音について研究していたので、
強く興味を持ったこちらの作品。
3分の音楽を聴くには、3分の時間が必要です。
好きな音楽を聴いているとふと過ぎ去る時間。
この作品に接することで日常に付随する時間について
再考するきっかけになれば、と勝手ながら願います。
作品にはイヤフォンが貼付けられているのですが、
コードの先は切断されているのです。
つまり音楽は聴こえない。
安直かもしれませんが、イヤフォンに自身の音楽再生機器を繋ぐと
作品から音が流れる仕組みを作ったりすることで、
体験できる作品にしたりすると、より視聴者の日常に
繋がりやすくなるのかもしれません。
なんか大学時代を思い出しました、ありがとうございます。
「うつりかわり」
野尻 亜弥
"箱の中の無機と有機の経過について"
アクリルボックスの中には草とガラスと時計。
時計が刻むのは、ボックスに内包された空間における時間なのでしょう。
どんな人工物であっても、時間の経過と共に劣化していく。
何十年、何百年をかけて、かもしれない。
その時間ごとの内部の有様を冷静に刻むのです。
一度、作品コンセプトについてお話してみたいなぁ。
「きょうの朝ごはん」
檜佐 佳子
休日の朝の時間をテーマにした今作品。
仕事のある朝は慌ただしく、朝食を抜くなんて方も多いのでは?
テーブルクロスの上にはコーヒー、トースト。
「文字盤が印刷されるトースター」がある日常を想像し、
にやにやしてしまいます。
気になったのはフォークとスプーンが置かれている点。
僕は和食人間なので疎いだけなのかもですが、
どう使うんだろう?
家庭ごとの食事に関する差異がここにあるのかもしれません。
「Aggregate of movement」
松永 春香
9つの時計の針が真っ白な板の上でくるくると回転。
シンプルな構造の上で、針の存在が際立ちます。
時計の総和から成るビジュアルに意識を奪われると同時に浮かぶ謎。
時計は個々、異なる時間を示しています。
その時間の指標は何なのか?
どの時計が今、この場所の時間を示しているのか?
この作品が示す、ビジュアルの美しさの先にあるものがより明確に構築されること
または、追随を許さないほど、時計の容姿に対するこだわり/答え
いずれかが盛り込まれることで、
より、作品のキャプションの強度が高まるかもしれません。
面白かったのは、こちらの作品の前で目を閉じたとき。
9つの秒針が異なるリズムで時間を刻み、
その音が音楽のように聴こえてきたのです。
そのとき、音という概念をも盛り込んで構築されたとしたら…
うずうずしました、鑑賞が楽しかったです。
-
-
時計はあくまでモチーフに過ぎません。
鑑賞を通し、時計を中心に置いて展開される様々な風景描写を
想像して欲しい。
是非、その目で、耳で、感覚でご鑑賞ください。
展示期間は8/31までとなります。
(ぱんだ)