はぐ実・永井えみ 『あの日を思い出し展』
2016.12.9 - 2016.12.12
EAST : 302 SPACE
- 昔懐かしいあの日を思い出して -
子どもの頃だった、記憶の中にある朧げで儚いあの日あの時。
二人のアナログ作家が送る、かつてのあなたかもしれないイラストの展示
永井えみ
「女の子と、動物と、植物と」
〜寂しい夜〜
夢を食す霊獣とされる「獏(バク)」が眠るように横たる。
そんな彼を枕にするように、少女や小動物、植物が寄り添う。
昼夜の境界が曖昧であると観察される空間は、
意識の映しとも、少女の自室とも判断できる。
天井部から吊るされたラフレシアを見るに、
花粉にも似た物質が散布されて、
その成分が生物たちを一つの精神状態に導こうとしている構図にも見える。
そのベクトルは、一時的であろうと、
安定を求めるものに違いないと、考える。
「おさんぽ行こうよ」
彼女が引き摺っているのは、乗用玩具「ロディ」っぽい。
記憶が確かならば、ロディにリードを付ける部位はない。
だから彼女は取っ掛かりを探し、取り付けたと推察する。
たぶん、固結びなんだろうな。
まだ様々な結び方を知らない年齢だと思うから。
もちろんロディは自律走行しないから、
ボディと塗装をごりごり削りながら散歩にでることになるのだけど。
なぜ、自律走行しないのか?
私と散歩に行きたくないの?
なんて表情を彼女はしてる。
はぐ実
「ゆめうつつ」
朝
夢とも現実とも区別がつかない状態であることは、
作品から、情景から、彼女の表情から読み取ることができる。
こぼしたミルクの海を航海するヨット、
ずり落ちそうな目玉焼き、
壁に描かれたもう一つの次元。
それらの不安定さの象徴は、
覚醒を意識下で拒もうとする表れか。
しかし、平和な表出である。
「看板娘」
〜駄菓子屋へようこそ〜
「ゆめうつつ」と同様に、食べ物が登場する作品。
駄菓子屋という看板はめっきり数を減らしたが、
実は駄菓子という存在は、ひっそり生きている。
安価かつ高彩度で小さくて過度な味付け。
子供に愛され、子供でも手が届く。
そんな手軽な菓子をこよなく愛する少女が、
相手をしてくれるお店が本店なのでしょう。
「あの日」というワードは、過去形で、
あったかもしれないし、なかったかもしれない、
けどあったかもしれないという気持ちにさせる。
尊くて、センチメンタルな言葉に相応しい、二人展。
はぐ実・永井えみ 『あの日を思い出し展』
2016.12.9 - 2016.12.12
EAST : 302 SPACE