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長谷川圭佑 『少女寫集展2016東京』



長谷川圭佑 『 少女寫集展2016東京 』
GALLERY SPACE : 1-F

写真家 長谷川圭佑さん

前回は「百合」がテーマの写真作品を取り上げてらっしゃいましたが、
本展示会では、自身の作品の全てを出し尽くす、との意気込みのもと、
現在までに撮影された膨大な数の少女たち、
少女の数だけ存在するユートピアを、
心ゆくまでご覧頂けます。







振り返れば2010年頃より長きに渡って、
当ギャラリーにご出展頂いています、長谷川圭佑さん。

広い壁面の上、所狭しと飾られた少女たち。
懐かしい顔ぶれ・写真・少女を見つけました。

その時から年単位の時間が経過したというのに、
彼女たちは相変わらず初々しい少女のまま。
時を止めて、記録、保持し続ける、写真というメディアの強さを思い知る。





私個人、約二年振りに長谷川さんの展示会レポートを担当致します。
どう言葉に置き換えることができるか、今この瞬間どきどきです。
<前回の記事はこちら>


長谷川さんがお撮りになる対象は、ご覧の通り「少女」

年齢を考慮すれば、未だ自己の確立もままならないだろうし、
した気になっても隙だらけ、未発達、未熟、成長過程の女性。
不確定要素だらけ、定まらない外見と自己を抱えている。

しかし、これはもう単純に、時間が足りないだけ。
不足を見つけ、補い、前進している、最中なのだから仕方が無い。

幼くあろうとするも、背伸びをするも、
全ては知る為の手段に過ぎない。

不足という余白は、
成長の伸びしろに他ならないと考えます。




そんな「少女」たちが、
長谷川さんの写真の中ではどのように生き、振る舞っているか。

対する彼女たちは前述した内容と変わりなく、
自らの内側にある不足を理解した上で、佇んでいる。




そのすぐ近くで、際立っているものがある。

隙間からわずかにこぼれ落ちる、
光に似た、
しかし、絶望に至らない程度のイメージ。

もしくは今だけは触れることが叶う、
期限付きの夢とか希望。

憧れ、求めようとする対象と少女を、
長谷川さんは、共に写している。





そう思うから、長谷川さんの写真は、光が眩しい。

白飛びしているとか、そういうことじゃなくて。
本当でも、嘘でも、かりそめでも、
求める者と求める物がそこに見えるから。

羨ましいという呟きが漏れてしまう。




屋外での撮影も頻繁に行われる長谷川さん。
田園、廃墟、花畑、洋館、学校。

少女という年齢や外見、制度上の制服(衣装)を意識した上で、
効果的に働く場所をセレクトされている。

整った表情のモデル、絵に描いたような舞台。
この二つは人形と箱庭を思わせ、
現実を持ち寄って、組み合わせているというのに、
非現実感を漂わせる、錯覚、酔いにも似ている。






長谷川さんの写真を語る上で外せないキーワード

「悲壮感」

モデル自身が持ち、作り出す魅力と、
それらを最大限に引き出す撮影者の手腕を掛け合わせたもの。

上記の写真を一例に挙げるとしたら、
真っ白な雪景色、清涼感ある配色のセーラー服、
真っすぐに下ろされ、目元部分は切り整えられた長い髪。
小首を傾げ、伏し目がちで、わずかに口元を緩ませる。

そんな細かいパーツと動作の総和が、
悲壮感というネガティブかつ、魅力的な写真を作り上げる。





もう一つ、長谷川さんの写真を語る上で外せないキーワード

「未成熟な故のエロス」

上記写真、スクール水着(に白ソックス)
竹薮という舞台に身を置いた少女の姿をどう捉えよう。

学校帰り、突然にその細腕を掴まれ、
強制的に竹薮へと連れ込まれ、乱暴にも衣類を剥ぎ取られ、
面倒だからと理由で制服の下に着ていた水着が露になったシーン
(...というのは私個人の妄想の一部分で御座います)

長身の少女がぴたっとしたスクール水着を着用することで、
容姿から予想する年齢とスクール水着の適齢期(この言葉は適切だろうか)を、
照らし合わせ、審議にかける作業が自然と脳内で行われる。

表情を隠した丸みを帯びたヘアスタイル、
ほど良く肉付いたヒップ。

その都度、物差しをあてがって、
適正なのか?という疑問を解消したくなる欲求に駆られても、
触れられない、触れてはいけない。






しかしというか、やはりというか、
長谷川さんの写真、一番の魅力は、
写真を通してこそ見える、
光・希望に似た「何か」なのだと思う。

それは物のように触れることはできず、
何かを介し、見出すことで認識できる。

細く、朧げで、脆く、頼りない、
だけどとても愛しく大切なもの。

だから魅入られた来場者の多くは、
二度三度、そして次回の展示会にも足を運ぶ。






[ ここで物販のお知らせ ]
ポストカード、ファイル、作品集、フレーム入りの写真。
お気に入りの一瞬を、展示会場やWEBSHOPでお買い求め頂けます。
誰かの秘密を所有できる喜びや背徳感も味わって頂きたい。





常に会場に在廊し、営業時間の全てをつぎ込む勢いで、
来場者様と触れ合う長谷川さん、会場からは笑い声が絶えません。

過去の展示会と同様に、常に賑わいを見せる展示会場。
そこには長谷川さんなりの展示会の想いを感じます。


僕の個展は堅苦しいものではなく本当に誰でも気軽に出入りしていただけるものなので、
写真展などに行ったことが無いという方も、是非足を運んでいただきたいです。
敷居はめちゃくちゃ低いです。受付とかもありません。

想いの理由は、正に次の言葉だと思います。

実際にプリントした写真は、PCやスマホで見るものとは全くの別物です。
もし、僕の写真を好きという方がいらっしゃるならば、
是非とも画面を通してではなく、直接写真を見ていただきたいです。


これは作家の皆が想うことだけど、
とても当たり前のことなんだけど、
それなんですよね。
ギャラリーという場所が存在する意味も。

だから本記事は、
皆様が展示会場へ足を運んで頂くきっかけとして、
現物を見たくなる欲求をくすぐるものになっていたら良いなと思います。

(ぱんだ)

長谷川圭佑 公式サイト
Twitter


長谷川圭佑 『少女寫集展2016東京』
会期:2016.4.1 - 2016.4.4