女子美術大学大学院 立体芸術研究領域 2年在学
土橋 葵さんの個展 " -PIERCE- "
EAST : 302 にて開催中
「貫通」をテーマに制作された作品群。
主な素材は 鉄とアクリル樹脂。
製品のように黒色に染め上げられた鉄板は、
土橋さん自身が薬品を用いて加工しています。
また、裁断、穴開け、研磨に至るまで全てご自身で行っています。
作品にたどり着く前の段階から。
丁寧に加工された部品の1つ1つが美しい。
鉄板の表面、無数に開く穴の数々には、
空虚な穴 と 実のある蛍光色のアクリル が交互に並ぶ。
黒色に染め上げた薬品の痕跡が鉄板の表面に見える。
それが、作家の手垢のように、
確かに手を添えて制作したという証にも見えて、
汚いとか通り越して、もうかっこいい。
1つの物質としてみるならば、人工物の塊。
それなのに、個々の作品を通して浮かんでくる
「人体」と「ファッション」というイメージ。
並列の金属板は骨のようにも見えてきた。
「ピアス」というタイトルが添えられているから、
その言葉に誘導させられているのかもしれない。
私も左耳にボディピアスを1つだけ開けているのだけど。
ここにある作品のそれぞれは、ピアスの名残を残していると思うのです。
それはファッションアイテムの1つとしてではなく、
ピアスというパーツが誇示しようとするそれを、
この作品達もアイデンティティのように固く握りしめている。
素材の性質にだけでなく、
アクリル素材の発色にも気を使ってらっしゃる土橋さん。
実際に現物を見て頂くとわかるのですが、
アクリル樹脂は触れる光量によって、驚く程に色を変えるのです。
まるで裏面には電源と配線が通っているかのように。
素材本体と素材外見の二点、隅々にまで通う意思。
質問を投げかけると、綺麗に私の手元に意見を返してくださるのです。
考え込まれています、練り込まれています。
でもといいますか、なんといいますか。
私個人の意見として、土橋さんの作品は、
引いて全体を鑑賞した後、近づいて細かいディティールを見るのがとても楽しい。
金具たちが片寄せ合って、
実用性の無いであろう形を作ろうとする様。
意味があろうと無かろうと、
そこに有るだけで、空間が引き締まる。
意味があるない、とかじゃなくて、
作品が作品として生きる為に必要なエネルギー/熱量。
それを彼女の作品は溢れんばかりに持っている。
でも、作品個々のタイトルを見た時に、
なんとなく、何故こんな形になったのか?
それがなんとなくであっても、伝わってくる。
固いけど、柔軟性のある作品群。
耳たぶに穴をあけるのも、鉄板に穴をあけるのも、
それは同じことなのかもしれないとか、変なことを考えてしまった。
興味を頂いた方、是非、土橋さんと会話を。
すんごい楽しかったです。ありがとうございました。
8月26日(日)までの展示となります。
(ぱんだ)