朱宮垂狐、田野敦司、日隈愛香、横倉裕司、夜野茉莉亞
『人形陳列室』
2019.12.9 - 2019.12.15
[ WEST 2-A ]
5名の造形作家により、異様な空気を漂わせる空間がギャラリーに出現。本展示は、作品を通して自分自身の存在を見つめ直すきっかけを与えてくれる。
一歩部屋に入ると普段の空気ではなくなり、誰かに見られているような緊張感。ゾクっとする雰囲気に興味がそそられる。早速、作家5名の謎めいた作品に迫っていきましょう。
朱宮垂狐
人形作品に魅了されて7年ほど前から作り始めたという朱宮垂狐さん。垂狐さん作の人形は、一気に吸い込まれるような魔性の瞳が魅力。そして神秘性を感じさせる美しい全身像。特に垂狐さんが想いを込めている部分は瞳と口の表情だという。それは直ぐに納得。憂いのある表情に誰もが心を持っていかれるだろう。関節でポーズが変えられる人形の基本は崩さずに、独自の世界を確立していく垂狐さん。首上のみの立体や顔のレリーフも全て命が吹き込まれた表情を持っており、じっくり鑑賞したくなる。
田野敦司
インパクトのある田野敦司さんの作品は、身体の一部をコレクションにしたかのような不気味さを持っている。非現実な状況ながら、生々しい質感と表情によってリアルな世界と混ざり合い、鑑賞している自分の身も危険を感じるほどだ。縫い合わせた跡や細々と分けられた身体は、生き物と物の間のような存在に感じ、同時に魂の存在とはどういうものかと考えさせられる。非現実と思っていたものはそれ程遠くないものなのかもしれない。
日隈愛香
生と死をテーマに作品を作り続けているという日隈愛香さん。幼い頃から家の近くにお寺や教会が近くにあったことから、死というものが自然と意識の中に入ってきたという。そのため、死に対してマイナスのイメージはなく当たり前のことのように捉えている。また、作品作りは自身の記録とも言えるそうで、その時々で実際に感じていることを表情しているのだそう。日隈さんは特に背骨のフォルムに興味を持っており、背中の表現も素晴らしいので、背面の鑑賞もお勧め。
横倉裕司
横倉裕司さんの作品は、不自然なモチーフの組み合わせに心惹かれる。
1枚目は、抜け殻のような多数の猫による球体の形をした塊。ある場所に1匹の野良猫が住処のように居座っているそうなのだが、いつも短期間で他の猫に変わっているという。時間は違えど同じ場所に多数の猫がやってくる。何をきっかけに入れ替わるかは分からないが、まるで同じ舞台で違う生命が繰り返し生きるという小さな宇宙のようである。「存在」と「時間」がテーマとも言える作品で、他の作品も様々な存在の捉え方があることに気付かせてくれる。
夜野茉莉亞
美しい少女を立体と平面で表現されている夜野茉莉亞さん。見た目の美しさとは反対に悲しい表情を浮べている。精神と肉体が分離してしまったかのような表情。そして、社会や人生へ葛藤があるかのよう。絵画の中の少女達は自傷している跡があるが、作品全体はパステル調の可愛い色をしているため、そのギャップがより心に突き刺さるものがある。私の勝手な解釈ではあるが、自身の魂が抜けた肉体の姿を立体作品として、空想の世界で生きる自身の姿を平面作品で描いたようにも思える
本展示は、一見衝撃的で怪しく恐ろしい印象を持ってしまうが、決して私たちとかけ離れた世界ではないことを教えてくれる。生命とは何だろう、人の存在とは何なのか。しっかりと向き合って考えることの重要性に気付かせてくれるのではないでしょうか。
出展作家
・朱宮垂狐
・田野敦司
・日隈愛香
・横倉裕司
・夜野茉莉亞
[ WEST 2-A ]
Staff Chi