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池田晶帆・小田陽菜乃 『胎児の夢』



池田晶帆・小田陽菜乃 『胎児の夢』
2019.3.6-2019.3.8
[WEST 1-D]

小説家・夢野久作の代表作『ドグラ・マグラ』。
その中で描かれている「胎児の夢」という章は、人類の輪廻転生を想起させる壮大な物語。
高校生だった二人の原点となったという本作は、大学生となった今現在でも作品制作に影響を与え続けているという。
そんな中、二人が本展を機に再解釈をした『ドグラ・マグラ』の世界観とは。


池田晶帆



繊細でありながら、力強さも感じられるドローイング。
「胎児の夢」の章で印象に残っているスケッチをコラージュのように描かれています。
この作品で使用されているインクは、ドグラ・マグラの世界観を表現するために特別に調合してもらったという赤なのだそう。
どろりとした太い線、毛細血管のように脈々と伸びる華奢な線。そして中央には胎児の神秘性を感じさせる鮮やかなブルー。
胎児の神秘性の中にも、人類が築いてきた10数億年の記憶が輪廻転生しているドグラ・マグラの世界観がより象徴的に描かれています。



現在、武蔵野美術大学の工芸工業デザイン科ガラス専攻を学ばれているという池田さん。
こちらのガラス作品は、大学の「お菓子を乗せる器」という課題下での作品。
この作品を制作するにあたって、福島県に伝わる黒鬼の物語を下敷きにしたそう。
村で大飢饉が起こりたくさんの子供が亡くなった。
そこで黒鬼が子供たちが餓死しないようにと黒鬼が用意した大福。
黒鬼が用意したその大福を乗せる器として制作したのがこちらの作品。
分厚くて重みのあるガラス作品は、底の部分を藻をモチーフに制作されているのだという。
藻をモチーフにしていることで、土に還るという印象や、器本来の「食べること」と「生」が結びついていることを想像させてくれる作品です。


小田陽菜乃



池田さんに勧められて読んだという『ドグラ・マグラ』は彼女の人生のバイブルになっており、
制作する作品も、無意識のうちに本作に影響を受けた作風になってしまうという。
こちらの作品は、ドグラ・マグラをイメージして制作された彫刻作品。
まるで胎児を抱きかかえる女性のような印象は、実は布団にくるまった女性自身。
胎児が最も安心するという胎内。日常生活の中で体感できる胎内的要素は、布団の中なのではないか。
そんな発想から生まれたこの作品は、見る角度によっては土偶のような、心臓のような、神秘的な「生」のイメージを象徴的に表しています。



小田さんは「アートを身近に感じてほしい」という思いから、アートをアクセサリーに落とし込む作業も行っています。
そもそもアクセサリーを制作するのが好きで、本展でも制作していた物の中でも「鏡」など、ドグラ・マグラの中で重要な役割を持つアイテムを展示しているという。
アクセサリーは今や気軽に装着し、主に「ファッション」としてのカテゴライズの中にあるでしょう。
それをあえて商品ではなく作品として展示することで、アクセサリーが本来持つ意味を再認識させてくれるようでした。


二人の原点となった小説『ドグラ・マグラ』。
それぞれが思考する本作から受けたインスピレーションは、それぞれ死生観を優しく、強く、時に生々しく考え直させてくれるものでした。

本展は3/8(金)まで。

本展を機に、『ドグラ・マグラ』を閲覧してみてはいかがでしょうか。

Twitter
池田晶帆:@suicide_bbb
小田陽菜乃:@nonahi1130

<スペース詳細はこちら>

[WEST 1-D]

staff kome