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ムラセマナブ 『ペ リ パ ト ス の 祝 福』



ムラセマナブ 
『ペ リ パ ト ス の 祝 福』
2016.10.19-2016.10.23

「祝福」という言葉からは、前向きで、明日へ向かう期待のようなものを感じずにはいられない。

三年間取り組んできた三部作の最終章を飾る本展のタイトルとして選ばれた言葉として、これほどまでにポジティブなものはないのではないでしょうか。






本展示は2014年『イデアは言葉を話さない』から始まる一連のプロジェクトの集大成となる展示。音楽で言えばいわばベストアルバムのよう。

2015年の『フィリアは渇いた中で』を含めた総数100点ほどの中からいくつかの新作、未発表作品までを再構築し、三年に及ぶ一つの物語の完結編として構成されています。




『イデアは言葉を話さない』より。
言葉と写真作品で成立していた当時の展示を再現する形で展示されています。


写真作品はテーマやストーリーに基づいて撮影されたものと、一方で感覚的もしくは衝動的に撮られた写真を後から見返して何らかの意味を見出したり、撮影した当時の感覚に形を与えたものこの二種類があると思います。

個人的にムラセさんの作品は後者で、こちらの作品も写真があり、それを下地に言葉が紡がれている。そんな印象があります。




こちらの絵画は、今回のプロジェクトの根幹とも言える作品。
曰く、ここから物語が始まったと言っても過言ではないというほど、象徴的なものです。

複数の異なる写真のレイヤーを重ね合わせて構成された作品が多く存在するこの展示の作品なかにも、この絵画作品を取り入れたものがいくつか見受けられます。




写真で何かを語るわけではなく、視覚的に楽しんで欲しいというムラセさん。
被写体の頭の中に退色した花が重ねられた作品は、シンプルに美しい。

それと同時に、この作品のように複数の要素が重なり合うことによって新たな意味がそこに生まれて、それを始まりとした物語がこの静止した写真から動き出すような、胎動する感覚が鑑賞者からは沸き起こるような気がします。

決して広くないこの部屋には、三年間で築き上げてきた世界が確かに広がっていて、新しいストーリーが動き出す予感を感じさせてくれる。そんなメルクマールとなる展示です。


ムラセマナブ / フォトグラファー

http://www.murase-films.com



【 展示スペース : WEST 2-E 】

written by isaka