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『ざくろの庭』 を終えて

会期/2012年06月16日(土) ~ 2012年06月18日(月)

回を重ねる度、参加者全員が何段もの成長を遂げる企画展も珍しい。
短いスパンで、繰り返し、繰り返し。
着実に、実直に制作に向き合っている結果の表れです。

ざくろの庭 10th Anniversar
当日ご来館頂けなかった方へ、より作品をクローズアップし、ご紹介致します。
次回の「ざくろの庭」に足を運ぶきっかけになりますよう。

(※写真をクリックすると拡大します)

コケチチさん

4人の作家の中でも、最も精神的に奥まった場所に位置していました。

この方は、見せたい場所を突出させるという手法を取らず。
箇所を磨きあげる/光を含ませることで、余分を加えることなく、フラットなまま、情景を取り上げる。

「 一期一会 」

私達は光の存在によって物を見ることができる。
この場所、月明かりがあったからこそ、二者は関わり合いを持つことが出来たのであろうと。

彼女は何かを探しに来て、でも、恐らくその動物ではない。
それでも興味を注がれるその対象と、この瞬間を逃したら、もう会えないかもしれない、と。

「 アマヤドリ 」

宙を泳ぐカラフルな魚たち。
人物の上部できらめくクリスタル。
どちらも、光を内から発するように眩い。

両目を潰されそうな光の雨あられから、贅沢にも避けているだけなのではないかと。

蒼鬼ハルさん

手描きであることを疑いたくなるほどに、上質な作品を次々と仕上げるハルさん。
近々グループ展を控えていらっしゃるということで、2点だけ取り上げさせてください。

テーマ「お祝い」として描きあげた作品。

贈答品に添えられる水引によりかかっちゃってます。
結び方によって意味が異なる水引。
これは輪結び、なのかな。(違ってたらごめんなさい)
だとすれば種類は「結び切り」。二度とあってはならない行事/お祝いに対してのもの。

逆に何度あってもよいとされるのは蝶結びということで、ここはめでたい席を見守る図なのでしょう。

「 野☆望 」

茶目っ気たっぷりのタイトルであります。
猫耳少女の背後に鎮座するグロテスクなスイーツ。
目玉はフェイクかも疑わしい。

しかし対照的に、彼女が抱く野望は世界征服とか民族浄化とか物騒とは程遠いものだと思う。
子どもが悪戯に願う、表面は黒いけど中は空洞の純な想い。

タカハシさん

彼女が描く多くの女性は、何かを思念するかのように
目を細め、視界を狭め注視している。憂いを浮かべ。

対象が明確に有る時もあれば、虚空を見つめることもあるでしょう。
対象を観察する行為は鏡のように、跳ね返り、自身を見つめる。


タカハシさんは人物だけでなく背景にも憂いを残します。
物質が物質で無くなるよう。
細胞のすき間に水と酸素を注ぎ、潤いを見せる。

過去、人が居たであろう痕跡を残したそれは、
触れたら指先が湿り気を帯びるようで。
梅雨のこの季節、最も映える時期であったのではないでしょうか。

うみこさん

今まで彼女の作品を見続けてきた方ならば、心地良い違和感に襲われることでしょう。

"今まで"身を守ってくれていた殻を見事砕き割った。
亀裂から吹き出るのは、ひたすら我に溺れ、危機感、羞恥心、抑圧から解放された少女たち。

「 舞台裏(休憩) 」

うみこさんの過去作品は、おおまかな完成図を先に作り、
着地点のズレを無くすよう、計算/調整していた印象がありました。

その手法によって、キャンバスは1枚で独立し、また、描写自体が額装にも成り得た。

しかし"それ"を脱ぎ捨てて、少女は肉を貪り始めた。
世間体など、舞台の裏では価値にならないのだと。

この一枚が過去との決別における、突破口であったように思います。

「 水圧に乗る 」

開放された彼女のたちはとても自由で魅力的。
不敵な表情は、恐らく彼女たちがまだ幼く、未熟で、
表情の作り方を知らない結果なのだと思う。

生まれた感情と表情の組み合わせがわからない。
追いついていないのです。
だから彼女の表情は"不正解"の可能性がとても高い。ミスリードといえば大げさ。

話はかわり"圧に乗る"という言葉選び。舞台裏(休憩)もそうだけど、
タイトルにさえも、横暴な少女が馬乗りしている。
楽しそうだ、水を遊具にしちゃって。

「 抑える 

先ほども述べた「幼さ/未熟」を体現した珠玉の一枚。

タイトルと描写のそれぞれ、贅肉がこそぎ落とされて、
ストイックに"抑える"ことだけを行う少女を実体化。

声に出すことなく、手を出すこともなく。
抑えに抑えて、それでも抑えられないほどの激情。
誤魔化すということを知らない。
精神上の摩擦を減らし、やり過ごすという手法を知らない。

行き場を失った「問題」が肉体から溢れ、少女の身を焦がす事態なのだから。
既にキャパオーバー、「溢れだす」の位置。

それでも尚、"抑え"ようと必死にもがき、
"抑え"られていると信じきっているのだから微笑ましい。
見事な調教です、うみこさん。


以上、ざくろの庭 10th Anniversar の様子をお伝えしました。
今回、ご覧になれなかった方も是非、次回は足をお運び下さいませ。

(ぱんだ)