城山 香菜さんの展示が開催中です。
-白と黒-
対極ともいえるこの二色を
キャンバスの上で巧みに操る彼女の作品。
細密な描写に魅了される人は
後を絶ちません。
糸で繋がれた二人の人物。
左の女性の腹部に注目してみると
へその緒のようなものが見えます。
腹部の膨らみは、懐胎を意味しているのでしょうか。
スカートを履いている恐らく女性であろう右の人物。
二人を繋ぐのは細い糸。
糸には蝶々結びの結び目もあり、
簡単にほつれてしまいそう。
お互い背中を向けた状態の二人の描写は、
現代の希薄な人間関係を表現しているようにも思えます。
長い髪の毛で顔を覆った女性を描いた左の作品。
しかし、女性の表情が見えないのは
その長い髪の毛だけが理由ではないように思えます。
一見天の川にも見える右の作品。
よく目を凝らしてみると、
天の川を成すのは無数の目です。
どの目もこちらをしっかりと見据えており、
一つとして視線を逸らす事はないため、
一分一秒を監視されているようです。
二本の足だけが覗くこちらの作品。
この足の持ち主が男性なのか女性なのか、
大人なのか子どもなのか、
一切の情報を与えず、ただ足だけが見える。
足先に注目してみると、
立ち姿の描写ではないのがわかるが、
それでは一体・・・。
セーラー服を身にまとった
おかっぱの女の子。
顔は真っ黒に塗りつぶされ、
そこから表情を読み解く事は一切出来ません。
彼女を囲む謎の生物。
まるっこいものや毛の生えたもの、
さんかくっぽいものや手がたくさん生えたもの・・・
一つとして同じものはいないようにも見える生物。
共通点は「彼女にまとわりつく」ということ。
喜怒哀楽の見えない生物に囲まれた彼女は
一体どんな表情をしているのか。
全ての作品に共通しているのは、
人間に表情がないこと。
感情を表現することが難しくなりつつある
現代を表現しているのでしょうか。
展示されている多くが平面作品なのに対し、
こちらの二作品は半立体作品。
どちらの作品も、穴の奥から
目がこちらを覗いています。
そして穴から流れる白い液体。
涙のようにも見えます。
城山さんの展示を眺めていると
現代社会における寂しさが
表現されているように思います。
表情がない人間、監視される重圧。
技術の進歩により一見華やかな現代を描く
白と黒の世界。
本日までの展示です。
ぜひご覧下さい。
*sally*