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Mika Nitta 『チロル,スロウ,ワルツ』


EAST : AP-2
チロル地方の風景から受けたインスピレーションを注いだ作品を
展示してくださっているのは Mika Nittaさん。

前回の展示では生物を注視し、対象に向き合った描き方でしたが、
今回は中距離から見下ろすように景色を映しています。


線の集合が編み上げる。
密度はあれど、その景観はおだやかなもので。
草木があるのならば、その表面を飾る形状を描くのではなく、
その内部、生命力とでもいいましょうか。
生を循環させる血管が透かしてあるかのようで。
見ている自分が、あたかも、透視する能力を身につけたかのようで。

僕らの身体を包み込む肌。
その皮膚の隙間から生える産毛。
それらは、組み上がった骨の上に貼付けられて、
僕らはその形を見ている。

でも不思議なことに、それだけじゃないのですよね。
言葉には出来ないけど、安易だけど、
「なんとなく」
ってことがあって、それが僕らを包んでもいる。


ただ、ある形を許容することも必要だし。
なんとなくで受け取る「何か」も許容しないと、
取りこぼしてしまうものも山ほどある。

今回、キャンバスの周囲を囲んでいるフレームは自作されたもの。
ぐんにょりと丸みを帯びたそれを見て、
「卵」「繭」「花びら」
鑑賞した人は異なった意見を述べていました。

それは、観者の目で絵が咲き、開いた瞬間です。


「花を咲かす」

三作あるうち、僕が最も好きな作品。
少し大きめに掲載させて下さい。

あやとりをしている少女二人。
それはゆるりとした彼女らの日常において与えられた、
彼女らの使命であるように思うのです。

その土地に根付く神とまで、言っていいのか迷うのですが。
妖精の方が近いかもしれません。

花の命、その始まりはこんなやりとりの中から生まれる。
生まれることへの祝福はその瞬間のみに注がれ、
花は肌寒い気候の中にその身一つで捧げられる。

花「が」咲くのではない。
花「を」咲かすのです。

生を与えること
生を受けること

満ちた生命力が淵から溢れ出す、力作です。

今週の土曜日までの展示となります。
販売も行っておりますので、是非そちらも視野に入れてご覧ください。


(ぱんだ)