アーティストグループ "Sircle"による写真展がWEST:1-Fにて公開中です。
メンバーは、武政大地さん、牧内正太さんのお二人。
今回の展示では 『過去、現在、未来』という言葉の上で写真が展開されます。
加えて、添えられたタイトルによって、それは表皮を剥がされたかのように、
装いを変えます。
さて、展示の様子をのぞいてみましょう。
同じ高さに揃えられた作品。
部屋をぐるっと回る中で、何度も時間の意識を変化させられる。
それはタイトルという言葉の引力と想像力の遊び心。
まずは出来る限り頭をからっぽにして作品に向かいました。
作品を見て生まれた、ぼんやりとしたイメージを抱いて、
タイトルに目をやります。
作者が用意したフィルターとでもいいましょうか。
その瞬間に景観は色褪せたり、剥がれ出したり、ぼやけたりする。
景色は分裂し、並列に。
僕が一番好きだった武政さんの作品はこちら。
『モノ』
スプレーペイントされてしまったブロック塀。
恐らく、外界、他所との境界線役として設けられたブロック。
誰かが施したペイントの端部。
どちらも人間を介して生みだされたもの。
それらの名前全てを捨て去って「モノ」という総称になってしまった。
以前、作られたそれらは名前を剥奪されて、「モノ」になってしまった。
ではブロックやペイント物は何時から、「モノ」だったのか。
タイトルとして名付けられたとき?それとも生まれた瞬間?
そんな?達が、時間軸と言葉に揺さぶられて、揺らぐ。
作者の武政大地さん。
一番のお気に入りは右側の作品「生きる」
渋谷のスクランブル交差点を写した一枚。
行き交う人達の残像が残る。
それはもう動くことの無い紙面の中で生きて居た人々の軌跡。
時間をという言葉を包み込んで、そっと作品の傍らに同居させる。
温かみのある視点、作品でした。
僕が一番好きだった牧内さんの作品はこちら。
『終幕』
既に使用されなくなったホームを挟むのは、カメラマンのご自身と、
向こう側にある現在使われているホーム/人々。
新しいホームに向かうには、陸橋のような場所を渡り、
古いホームを乗り越える必要があるんですって。
もう人々を受け入れる役目を終えて、日に日に朽ちていくホーム。
壊されることなく、その景観は新しいホームに向かう人々の当たり前の景観の一つに加わる。
過去、現在、これから
その三つがこの一枚に重ねられているようなのです。
作者の牧内正太さん。
お気に入りは左の作品「記憶・回想」
四角、円形、様々な形が組み合わさったジャングルジムを、
下から見上げたこちらの一枚。
子どもの頃、腕を伸ばし掴んだパイプが作る一区画。
それが一つの階層に見えました。
自分が自分である為に、記憶を積み重ねる私達。
膨大なまでに膨れ上がるその情報には、優先順位の札とか貼られていて。
重要度の高い記憶はメインストリートに。
付随する記憶は脇道に。
明確な形を持たないであろう「記憶の貯蔵庫」を可視化したら?
そんな、もしものお話し。
作品を観賞後、お二人から作品の解説/解釈を聞かせて頂きました。
作品をピックアップし、タイトルを付けたのち、
再び作品と向かい合う時間をきちんと持たれているのでしょう。
するするとお二人は言葉を紡いでいく。
お話しを聞けて良かったなと思う。
それはお二人とも、写真を撮って、写真ではない何かを見つめているから。
前を、上を向いて歩く真っ直ぐなお二人が羨ましいと思ったのです。
今展示期間は明日が最終日となります。
お近くにいらした際は是非ともご鑑賞ください。
武政大地さん、牧内正太さん。
今後の焦点の行き先が気になるお二人です。
お話しできて楽しかったです。
お時間割いて頂いてありがとうございましたー!
(ぱんだ)