土本海生
2021.6.1 - 2021.6.7
[ EAST T-1 ]
昨年の個展から約7ヶ月半。以前に比べシンプルな空間表現をされています。要素を絞ったことで感じられるものに変化は生じるのか。作品は全注目を浴びることとなる1点のみ。実に気持ちの良い潔さです。
多くの金魚を描いてきた海生さんが、今回表現しようとしたこととは。黒地に白で描かれた本作品は、一瞬の光を画面に収めたかのような動きのある輝きが見られます。ヒレは闇に溶けて見えなくなるほど長く、金魚の形態をした幻を見ているかのよう。
金魚といえば金魚鉢や水槽で泳いでいる姿を思い浮かべますが、海生さんが描く世界観はスケールが大きく、深海や宇宙といった想像し難い広さを感じます。この金魚も延々と深いところに泳いでいくのではないかと心配してしまうほどに。しかし、その心配は無用と言わんばかりに金魚の目はしっかりと前を向き、強い意志を持って突き進んでいる。そんな、静かな気迫を放っている気がします。
支持体は発泡スチロールなのですが、発泡スチロール特有の凹凸が金魚の鱗に見えてきます。海生さんの作品の特徴の一つに、生き物のような存在感を強く感じることができるのですが、それは描いた対象からだけではなく、作品全体から感じ取ることができるのです。金魚に命を吹き込むような描き方というよりは、金魚を描きながら作品に命を吹き込んでいく感覚なのではないでしょうか。
平面作品だけではなく、立体物へのペイント・ボディペイントなど表現の幅を広げている海生さん。どんな表現方法であっても軸がぶれない格好良いアーティストです。今回の作品は展示終了後に破棄されてしまうそうなので、ぜひ直接ご覧になってください。
■ 土本海生
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[ EAST T-1 ]
staff:Chi