2020.10.16-2020.10.18
[WEST 2-B/2-C]
憧れや羨望、嫉妬や不安。その時、その一瞬を精一杯生きている思春期。
今や眩しささえ感じるあの頃の記憶は、今でも鮮明に思い出されます。
セルフポートレートと絵画、ふたつの手法でこのテーマに挑むかえるさんの個展が開催中です。
写真作品とはまた印象ががらりと変わり、絵画作品では女の子たちの心がひりひりとする部分がシンプルで柔らかいタッチで描かれた作品が空間を彩ります。
しかしながら、モチーフは決して明るいものではなく、嫌悪や欲求、葛藤、その他様々な感情がデフォルメされたように描かれています。
本作で描かれている女の子2人は、上履きを片方しか履いていなかったり、怪我をしていたり、ひとりは制服を脱いでいる不思議な光景。
10代の頃からセルフポートレートを撮られてきたというかえるさん。
2-Bのスペースでは、セルフポートレート作品の展示が展開されています。
女の子のセンシティブな感情は、他人には理解してもらえないと思う方も多いかもしれません。
そのどうしようもない、しかし大々的に出せないもどかしい感情を、セルフポートレートという、他者が介入しない方法で制作することで、より個人の感情をありありと感じることができます。
あくまでも個人的で私的な感情から作品の着想を得ているというかえるさん。
こちらの作品は、印刷工程で用いられる4色刷り(CMYK)に着目し、レイヤーのように4枚の写真をCMYKのカラーで印刷したものを合わせたもの。
ほぼ同じ時間、同じシチュエーションで撮影された4枚ですが、アングルの多少のズレで顔以外の部分のブレが特徴的に表現されています。
カオティックな場面でありながら、しかし表情はあまり変わらない。
女の子の繊細な心の揺らぎがサイケデリックに表現されています。
疑心暗鬼になって、誰も信じられなくなってしまうこともある。
でも、心の拠り所は身内や友達ではなく、テレビの中のスターだった。
そんな経験をされたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
かえるさんにとってそれは平成の歌姫。フィルムカメラ風に撮影したという本作は、かえるさんが青春時代を過ごした数年間の西暦が記載されています。
こちらはなんと、かえるさんの学生時代のメモや落書きなどをした紙に上から印刷された作品です。
近くで見てみると、鉛筆の木炭や修正液の跡、配布物のプリントなど、その当時のメモがそのまましっかりと残っています。
制服を着たティーンを見守る無数の目は、その後の自分自身。
10代の頃の記憶は、その後の人生にも強く色を残している。今を生きる自分からの強いメッセージのようにも感じました。
2-C:ずっと下校中
写真作品とはまた印象ががらりと変わり、絵画作品では女の子たちの心がひりひりとする部分がシンプルで柔らかいタッチで描かれた作品が空間を彩ります。
しかしながら、モチーフは決して明るいものではなく、嫌悪や欲求、葛藤、その他様々な感情がデフォルメされたように描かれています。
実は片方の子はいじめられっ子で、それを助けた女の子が服や上履きを貸してあげている、という状況が描かれています。
しかし俯瞰してみると、何故そんな行動をとっているのか、大人になった人間からみてみるととても不思議に思えたりもします。
《先生には解けない》というタイトルからも、少女たちの無垢な感情と、当時のセンチメンタリズムを想起させます。
ちょっぴり刺激的なこちらの作品。
思春期の女の子同士特有のスキンシップは、恋人と友人の境界が曖昧に感じるとかえるさんは仰います。
抱き合ったり、手を繋いだり。「好き」の表現が少女たちなりの形で表現された時、それが過剰なほどのスキンシップなのでしょうか。
極端なまでにそのスキンシップを絵の中で表現されており、その痛々しいほどの彼女たちの瑞瑞しさにどこか心を打たれてしまいます。
ティーンという年代。いつまでも永遠に続くと思っていたあの頃。
そして、「あの頃」に囚われて続けている今の私たち。
その意味では、あの頃は永遠なのかもしれない。
今ティーンを生きる人たちにも、かつてティーンだった人たちも、忘れられないセンチメンタリズム。
生きづらい世界に生きていると感じていても、「自分らしくいればいい」そんなかえるさんの想いが込められた展示となっております。
本展は10/18(日)まで。
Twitter:@ka3ru24
instagram:@ka3ru.ms