あかやまゆい 『ぬるい朝、ぬるいケーキ』
あかやまゆい
『ぬるい朝、ぬるいケーキ』
2019.12.10-2019.12.12
at WEST 1-A
生活感の漂う展示空間に、私小説を読んでいるかのような絵と文章が飾られているあかやまゆいさんの個展『ぬるい朝、ぬるいケーキ』。日々をどうにかこうにかやりくりして、暮らしの中で見つけたなにげない風景を描いた作品たちが並んでいます。
用事があるので定時に帰りたい事を伝えたら、仕事をクビになりました。
新卒の時も就職できず、ふらふらしていて、また地に足着かないあの時に戻ってきました。
朝起きる必要もなく、ぬるい時間を過ごしています。
毎日変わるのは天気くらい。
誕生日前の3日間。
わたしの見たものを、見た景色を、描くのです。
誕生日、ぬるいケーキを食べるのでしょう。
こんな文章から始まる本展示。
ここに展示されている作品は、日々の暮らしでうまくいかないこと、鬱屈、楽しかったあのときの思い出など、それぞれにストーリーがあります。
飾られている絵画作品には、そんなストーリーが私小説のような文章で綴られています。
飲んでたワインをこぼしてシミになって、目立たないようにと絵の具で色を足したという愛用のバッグ。こんなところにもあかやまさんという一人の人間のパーソナリティーが見えてきます。
学生時代に作ったというミクスドメディアの作品。
大学を卒業したくなかったというあかやまさんが、教室に落ちていたり、誰かが置き忘れていったりしたものを拾い集めて一つに束ねたのだそう。きっと一つひとつに物語があるはずで、あかやまさんにとってのこの作品は、それぞれに想いを馳せながら眺めていられるような思い出の再生機のようなものなのかもしれません。
とある事情により勤めていた会社を退職したあかやまさんは、最後の出勤日、普段はバスで通う通勤路を歩いて帰ったのだそう。見ているひとにとっては知る由も無いその帰路が、文章からありありと浮かんできます。
そして展示されている作品に目を移すと、それはもうすでに、自分が見てきた風景かのように鮮明に映り、いつまでも眺めていられます。
展示期間中は公開制作も行なっています。
モチーフはあかやまさんの祖母の家にあったという大きな戸棚。
写真ではまだ序盤ですが、明日が最終日のため様変わりした作品がご覧いただけるはず。
気になった方はぜひ足をお運びください。
https://www.instagram.com/yui_red_1213/
【展示スペース:WEST 1-A】
staff isaka