EAST : 301
少しずつ季節が暖かさを取り戻しつつありますが、
この部屋は少しだけ時を遡っています。
首都大学東京写真部による写真展示。
しんと静まり返るような情景がおさめられています。
春休み、そして土日の影響もあり、EAST館は賑わっていたのですが、
この部屋は少しひっそりしていました。
作品が醸し出す空気が部屋に緊張感を与える。
声をひそめ、ただただ、作品を注視せよ、と。
" まるで陰鬱な朝の光のように "
岩澤 佑史さん
ここで紹介するこちらの作品。
写真の台紙は照明を照り返すアルミ板でありました。
景色を塗りつぶすほどのコントラストに、
照り返しの絡み合い。
何気ない日常の断片、それは日常と呼ぶべきなのか。
それとも、人工物と呼ぶべきなのか。
圧倒的な存在感でたたずんでいた作品。
アルミフレームではなく、板ってのがまた良いです。
その薄さの上にある強度が。
今展示をぐるりと一周して。
出展者さんに渡されたアンケート用紙を記入しながら、
もんもんと考えました。
"被写体と一定の距離感を保った"作品が多く見受けられました。
それは物理的/精神的の両面であります。
試行錯誤せず、試算をせず、ただただ距離を置いた作品は、
傍観者になってしまうことがあります。
傍観者は結果的に何かをもたらすことはあっても、
それは偶然の産物。
冷静な情景の中に熱情なる意思を込めて、
シャッターを押し切ると、狙った場所が熱を持つことがあります。
平面の中に質量を感じることがあります。
そういった作品に対面した瞬間、
観者は傍観者じゃいられなくなってしまうんです。
事件の当事者にかわってしまう。
そして今回の展示では、当事者として引き込まれてしまう作品が、
何点もございました。
部屋の空気が重くて、その緊張感が心地良かったです。
展示日は残念ながら本日が最終日。
お近くにいらっしゃる方は、是非、お急ぎを。
(ぱんだ)