バナーエリア

このブログを検索

エリア51 『虫の瞳』



エリア51 

『虫の瞳』 

2022.6.24  -  2022.6.27 

[ EAST 201,202,203,204,アートコーナー ]

「孤立」5名のアーティストが、自身で思い描く孤立。

そこにいるパフォーマーの息遣い、心情、目の動き、造形物とは違う生きた表現。

トム キラン 





今回この企画の提案のきっかけとなった「ALS患者嘱託殺人事件」
2019年に起こった事件で、ALS患者を医者が患者の状態を絶望と捉え、自殺を促した。
言葉もうまく伝えられず、動かなくなった体。
それでも心臓は脈を打ち続ける。

カーテンを開けた瞬間に彼の姿がみえ、ただならぬ雰囲気に飲み込みこまれてしまいました。
車椅子に腰掛ける彼の姿は、本物の患者のように見え、役者だということを忘れてしまいます。
この部屋では彼に話しかけたり、彼に触れることができます。
しかしあまりの雰囲気に私は何もできず、ただただ圧倒されて彼を見つめていました。

人は話すことができなくなり、周りと違う体になることで、人は孤立となっていくのでしょうか?
変わり果てた人の姿をみて、私たちは変わらず接することができるのか?
目の前にいるたった一人の人から生まれる無数の問いに、私は答えを出すことができませんでした。





神保 治暉 






今回この「孤立」を考えるための資料として使用された、フランツ・カフカ著「変身」
こちらの部屋ではその「変身」の本から引用されたセリフが、おもちゃの電車にのせられたスピーカーから流されたり、タイピングされている様子が見れたりなど、その本に関する内容が多く見られます。

おもちゃの電車の走る音、スピーカーから流れる会話、役者がタイピングする音。
それらの音が無音の部屋に響き渡り、雑音や人々の声、生活音のように感じられる。
音が非常に印象的な部屋でした。

広い部屋の端っこにいる彼はおもちゃの電車に背を向け、そこにはまるで壁があるかのように見えます。
彼は小説に登場するザムサなのか。
現代に置き換えられた、小説の世界のよう。
或る日突然、ある出来事をきっかけに孤立していく物語、しかしそれは小説の中だけでなく、現実の世界でも起こりゆることであり、そのきっかけは思いもよらぬ出来事であるという点においても、とてもリアリティーがあります。
そして、前部屋のALS患者の状況とどこか重なる部分があるように感じました。






高田 歩





暗闇の中にたったひとつ光る青い電球。
そこには透明のボックスに囲まれた女の子がいました。
彼女はボックスの中でメッセージを書き続けます。

私はひとつ疑問に感じることがありました。
彼女はこのボックスに囚われているのか。
それともこのボックスは、彼女自身が作りあげたものなのか。

私の視点では、ボックスの中で過ごす彼女の姿はどこかリラックスしていて、表情も緩やかで恐れや恐怖をあまり感じられず、孤立することで自分を守っているように見えました。

彼女の放つメッセージ、自分に向けたものなのか世間に向けたものなのか。
最後はメッセージで埋め尽くされてしまうであろう、彼女のボックス。
私にとってそのメッセージたちは、現代のSNSにより言葉に埋め尽くされた世の中と、その言葉に覆い尽くされ生きてる私たちを連想させられるような表現でした。







中野 志保





床一面に並べられた花札や散らかっていているおもちゃ。
部屋ではメトロノームの音が響き渡っています。

メトロノームはずっと一定のリズムで、永遠に音を奏で続ける。
彼女は時頼、自分の脈を取りメトロノームをあわせていました。
自分にしか聞こえないはずの心臓の音を人に聞かせている、私は彼女の胸に耳をあて、彼女の心臓の音を聞いているような気持ちになりました。

部屋に広がるおもちゃ。
子供時代を彷彿させ、人は子供の時から自身で心臓を動かし生きている。
もともと人間は孤立した存在であるという印象を受けました。
そして、そうした孤立する人間の脳の中へ入り込み、思い出や生きる力を見ているように感じました。





山本 史織





キッチンのあるこちらのお部屋。
ベッドや本などが置かれ、ある一人の女性の部屋に。
彼女はお茶を飲んだり、本を読んだり寝たり、とても自然体な人生のワンシーンを客観視できます。

あまりにもナチュラルで、思わず孤立とは?と疑問を持ってしまうような展示ですが、みんな一人一人が常に孤立して生きている、ということを実感させられるお部屋でした。
人はいつも孤立・孤独を感じながら、人との関係を求め生きている。
彼女の姿を見ている間、彼女が何を考え何を思いそこにいるのか、私にはわかりませんでした。それもまた、私自身が孤立していることを意味していたと後になって気がついたような気がします。

この展示のキャプションにもある、
「他人が何を考えているかなど、そもそもわからないものだ」と考えながら人と接することができれば、私の孤立は孤立で無くなる
という言葉を体現するような展示でした。







生あるものが生で創造するアート。
写真や絵画などとは違う、独特の雰囲気や緊張感がありました。

「孤立」というテーマを深く掘り、いろんな角度から見て見る。
とても興味深く意味の深い展示でした。
本日から展示スタートです。


パフォーマンススケジュールは以下になります。

6月24日(金) 17:00〜19:00
出演:高田歩 トム キラン 中野志保 山本史織

 

6月25日(土) 13:30〜15:30
出演:神保治暉 トム キラン 中野志保 山本史織

 

6月25日(土) 17:00〜19:00
出演:神保治暉 高田歩 中野志保 山本史織

 

6月26日(日) 13:30〜15:30
出演:神保治暉 高田歩 トム キラン 山本史織

 

6月26日(日) 17:00〜19:00
出演:神保治暉 高田歩 トム キラン 中野志保

 

6月27日(月) 13:30〜15:30
出演:神保治暉 高田歩 トム キラン 山本史織

 

​チケット
3,000円 (税込/自由席)
※本公演は電子チケットとなります。
※お支払方法はクレジットカード、携帯キャリア決済、コンビニ決済をご利用いただけます。





<スペース詳細はこちら>

[ EAST 201 ]


STAFF ALISA