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若松 朋茂/関 康広/小野 可愛 『とらわれ展』

全員の作品がそろった『とらわれ展』の紹介をさせて下さい。

 前回の記事はこちらです。

小野可愛さん


小野さんがずっとテーマにしているのは「生きている実感」。
インターネット、デジタル、仮想現実、漫画やアニメ、そういったものがありふれた現代で、小野さんはどうやったら「実在性」やリアルさを表せるかと考えた末、素材感にこだわる作品を作っています。

油絵を描いている時も筆致やテクスチャにこだわり、ミクストメディアの作品も多いです。

また、今回のタイトルは『無音の狂想曲』
狂気がモチーフです。
とある狂気、それに関しての小野さんの思慮、それを素材を通して作品に落とし込み、そこから「生きている実感」が立ち上る、そんな作品。

私たちはどこで生きている実感を得るのか。作品はなんの為に作るのか。作品を作ることで私たちは何かと向き合うことが出来るのか。我が身を振り返って、色々考えさせられる作品でした。


 関康広さん
 関さんはデジタル。
現物にこだわる小野さんとは対照的に、フォトショップで描かれた作品。

ただしどこかに「こだわる」という共通点は勿論あります。こだわる、或いは「とらわれ」ていると言っても良いかもしれません。

上の写真でいうと髪の毛の一本一本を見ていると、関さんの作業が想像されて、気が遠くなるような思いがします。
 こちらの作品も光や奥の緑など、細部までこだわりが。


これ以上手を加えることが出来ないところ、つまり完成というものへの意識の高さを感じます。「どこをもって完成とするのか」というのはしばしば議論になることですが、関さんはその線引きをきちんと出来る、そういう風に感じました。


最後は若松さん
若松さんの作品を見たとき、小野さんとも関さんとも全く違う画風で、三者の独自性が際立つ展示会場だなと改めて感じました。

若松さんの作品で面白いと思ったのは、足し算と引き算の加減です。こだわるところと力を抜くところのバランスと言っていいかもしれません。

このドアの辺りの描写、緻密です。汚れ、錆びた様子が伝わってきます。

ところが下の方に飛び出たこの謎の物体、平面的にぺたっと塗られただけです。こういうところから逆に若松さんの「とらわれ」が浮かび上がってきます。


こちらは別の絵。
こちらもこだわりと力の抜く場所の加減が面白くて、じっと見つめてしまいます。

若松さんは演劇などの活動もされているのだとか。出演した映画が賞を取ったとか、大学でも人気者で雑誌が出来てしまった程だとか、色々面白いエピソードを伺いました。

一見まとまりがないようで、深い所では共鳴しあう三人の「とらわれ展」、明日までになります。

DF STAFF KOZUE