沖野冬香 『虚構の中の「 」』
2020.1.31-2020.2.5
[EAST 203]
青と赤という対極のカラーリングが目を引く、EAST館の片隅にある小部屋。
美しいガラスの造形と、沖野さんご自身が被写体となった写真の数々が空間を彩ります。
とある映画をモチーフにされたという本展では、その青と赤の世界が冷たくも情熱的に表現されています。
キラキラと、美しくも少し儚く輝くこちらの作品群は、沖野さんがご自身で制作されたというガラス作品。
ガラス作品は流氷をイメージして制作されたそうで、レイヤー感がとても美しく、全体的にブルーやグリーンといった寒色をベースにされているのも印象的。
どこか冷たさと、寂しさといった感情も流れてくるよう。
こちらが使用されていたガラスで、実際に近づいて見てみると、そのテクスチャー感や気泡など、流氷のイメージそのもの。
写真パネルの上からガラス作品を重ねることで、レイヤー状になり、より流氷のリアリティに近づきます。
みずみずしさと冷たい氷のイメージが一瞬にして伝わります。
赤い服を身にまとい、そこに横たわるのは沖野さんご自身。
実は本展はとある映画をモチーフにして作品を制作されたそう。
映画内で語られる男女の関係性は非常に複雑で、女性をたぶらかしたのは男性か、はたまた女性自身なのか。
その駆け引きともいえる関係性を、沖野さんご自身と沖野さんを撮影する唯一人のカメラマンに投影した部分もあるのだそう。
佇む女性の心情は、無そのもので、それは鑑賞者に様々な想像を膨らませます。
あえて説明的にせず、感覚的に作品を捉えてもらいたいという沖野さん。
矢印はどちらからどちらに向いているのか、はたまた実は向いていないのか。
カメラマンとの「共犯」であるという本展は、冷たくも情熱的で、ミステリアスにも感じられます。
赤と青、この世界からあなたは一体どんな感情を持ち帰るでしょうか。<スペース詳細はこちら>
[EAST 203]
staff kome