東京造形大学テキスタイルデザイン織専攻
細谷 佳永さん、松尾 美沙さん
お二人によるユニット
『 ほそやさんとまつおさん 』
モノと服を行き来するような、
作品が並びます。
" 白からはじまる、非日常な日常。
白で支配された空間を感じてください。"
色々な「白」が存在します。
青みがかった、涼しげな白。
こんがりと、日焼けした白。
その微妙な色味の違いは、
意味や優しさ、年月さえも纏おうとする。
これから紹介するお二人の作品の数々は、
頭の中に心地良い「?」を置いてくれる作品たち。
「白」からどこかへ連れて行ってくれる作品たち。
" 海底少女 " パルプ、金網 |
細谷さんが制作された今作品は、帽子。
頑丈な金網で形作られた骨子を用いて、
手すきを行うことで金網の表面にパルプが定着し、
このような作品が出来上がった。
モチーフは海底、珊瑚。
海中に生息し、海底に根付く珊瑚の姿と、
うごめく金網に定着するパルプの姿が重なる。
海藻や網や魚の卵をも想起させる帽子は、
かぶればそれこそ" 海底少女 "になって、
頭に海をまとう存在になれるのかもしれない。
地上で、酸素と二酸化炭素に囲まれながら、
意識を海に沈めることが。
地上で、酸素と二酸化炭素に囲まれながら、
意識を海に沈めることが。
" ティーンエイジャーの抜け殻 " 紙 |
細谷さんが今回展示されている作品はすべて「帽子」
ご自身、近年はずーっとショートカットなんだとか。
髪の量が減る、ことにより、頭部が外部に晒されやすくなる。
そんなことも制作のきっかけになったのかもしれない。
さて、今作の素材「紙」は細谷さんがティーンエイジャー時代に
使用していた数々のプリントが用いられている。
学校で配られたお知らせ等も含まれていて、
読めるのだ。
素材も面白いが、手法にもこだわりがある。
大量の紙で構成された今作は、
打ち付けるホッチキス
塗りたくるボンド、
糸で繕われている。
細谷さんの作品は、ファッションアイテムとしての用途は勿論、
誰かを驚かせたり
誰かに?を渡したり。
純粋なる作品として存在している、
かぶれるオブジェとして。
" わた氷 " 綿、オーガンジー、ペレット (写真中央) |
松尾 美沙さんの作品は、
コンセプト/テーマをどう作品として反映させるかの
バランス感覚にとても優れていると思う。
作品としての成立も勿論検討されているが、
同時に「服」であるという認識を強くお持ちになっている。
「わた」は「わたあめ」が持つ「甘さ」
「氷」は「かき氷」が持つ「冷たさ」と
二つを混ぜて、中和させた今作は、
ほど良い甘さをした作品として、
服として佇んでいる。
小さなペレットを包むオーガンジーが
ボディを埋め尽くす。
そんな不思議な光景が、
こんなにも気高く、美しい。
可愛らしい名前だけど、
今からショーにだって出かけられる。
" ちくちく " 綿、麻、ウール |
異なる素材の布を張り合わせ作られた。
生地には多数のスティッチが張り巡らされている。
段々になった服は、
照明からの光が降り注ぎ、
影の波が描かれる。
ほつれたら縫い直し、穴があいたらパッチをあてれば、
服としての寿命をのばすことができる。
1着の服を長い間着続けようとする為の作業。
その行為を " ちくちく " は提案する。
余ったハギレを縫い付けたり、
いたずらに縫い目を増やしたり、
ときにはペイントしたっていいかもしれない。
服が消費されるモノであるという認識が強まる中、
簡単に、服を愛せる方法があるよ、とささやく。
着ていくうちに汚れがついたとしても、
その汚れさえも今作品の魅力にかわる。
良いものは良い。
でも、ずっと付き合っていけば、
手放せない、もっと良いものになれる。
- - -
本当はもっと作品を紹介したい。
でも、ここまで。
展示会は明日、7/7(月)まで公開中。
白く染めることは、
次にすすむために。
(ぱんだ)