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アオキ サクラ 『アオキサクラ初個展「種」』


WEST : 1-B

以前、デザインフェスタで彼女の作品と出会い、
僕を含め、三人のスタッフが足を止めました。

アオキサクラさんの絵画展示。
彼女が描くモチーフの多くは動物であります。
その佇まいに僕は射抜かれたのだと思います。


アクリル絵の具で描かれた動物/植物/景色。
支持体のほとんどは木製パネル、直描きです。
下地を作らず、絵の具が直接パネルにのっかる。

通常ならば、素材の地が見えてしまうことは、
障害になり得るのですが。
これを"味"に、"利点"に置き換えてしまうアオキさん。

「 真実 」

僕が最も好きな作品はこちら、真実。
目が真横についている、それは捕食されないように。
周囲の全てを見通そうとする為に、進化/変化を遂げた。

また、脚力や聴力は可愛らしい外見に反し、
人間とは比べ物にならぬほど発達しています。

殺されないように、生き延びるために

どんなに文明が進もうと、表皮を剥がし、肉を露にすれば、
弱肉強食の世界になるのです。
今私たちが生きている場所はそういう世界のはずなのに。
知恵をつけ、忘却しようとしているのです。

僕は兎以下だよ。

「 うつる 」

素材の木目が特に美しい一作。
熊の背景に、巨木がそびえているようであります。

度々、熊が人間を襲ったというニュースが飛び交いますよね。
彼らは人を死に至らせるには十二分の筋力を持っている。

可愛らしいキャラクターにもなったりしていますが、
身体能力の面から見れば、恐ろしい生き物なのです。

そんな強い動物が、一匹で、森に佇む。
丁度、季節の移り変わりの中にあるのではないでしょうか。

貫禄ある佇まいの熊が、
今、この瞬間、気候の変化を全身で感じ取っているように見えるのです。
人間からしたら、涼しくなるのか、とか、紅葉綺麗だなとか。
風情を感じ取るのでしょう。

しかし、野生に生きる彼は、
「気温が下がり、食料(動物)が手に入りにくくなる」
「冬眠の準備をしなければ」

とか思うんじゃないかな。


少々、泥臭い動物たち。
荒野をかけ、生活している装い。

生きる為に、他の動物を殺し、食しているのだろうけど、
彼らからは敵意を感じない。

最低限の身の安全を確保しつつ、つかの間の休息、
そう、この瞬間をアオキさんが描いているのでしょう。


そして、ふと見えたのは生死とは無縁の世界。

動物たちが思い思いに戯れる。
夢に出て来たら、なんだったんだあれは?
と呟いてしまいそうな世界もあったり。




こちらは、現実の一部分を強調し、変色させ、
様変わりした景色を現実として突きつける作品。

異物との入替は行わない。
こちらは、あくまで揺るかな歪みなのです。

それでも尚、世界の調和は保たれており、
穏やかな日常は延長し続ける。


アオキさんの作品が、胸にずしりと響くのは、
初めの一歩が現実を直視しているから。

現象を描かず、過程を描き、
その前後を私たちに想像させ、
キャンバス内に観者を取り込むから。

厳しい目つきの動物たちではありますが、
その横には私たちの考えが入り込む余地が残されているのです。
それはアオキさんの配慮でありましょう。

動物に興味が無くても大丈夫。
キャンバスから辿った先には、人間もいるから。

展示期間は今週の土曜日までとなります。
ご来場お待ちしております。


(ぱんだ)