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いこま魚古 しまざきみく。 ヤマモトミヤ『しっぽをくわえろ』


いこま魚古  しまざきみく。  ヤマモトミヤ
『しっぽをくわえろ』
2020.3.30-2020.4.5
[EAST 302]

ゆったりとした広さのあるほぼ真四角の間取りで、空間に調和を与えるスペース302。
EAST館の3階まで階段を登りきった先に存在します。
『しっぽをくわえろ』というタイトルの由来は、中国の混沌(カオス)という妖怪から取られているのだそう。(しまざきみく。さんTwitterより)
それは目も見えず、耳も聞こえず、しっぽをくわえてぐるぐると回っている妖怪だという。
混沌の世界に迷い込んだかのように語られる3名の世界観を是非ご堪能ください。

ヤマモトミヤ


スペースに入ってまず目に飛び込んでくるのは、大判のキャンバスに描かれた2点の作品。
二年前に起こった出来事によってヤマモトさんご自身の身に起こった心と身体の変化。
やり場のない悲しさをまとっていたり、心にモヤがかかったかのような苦しみであったり。
美しく咲き誇るひまわり畑とその憂いを帯びた表情の人物との対比が、得も言われぬ感情を生み出します。
様々な感情が目の前のキャンバスから強くメッセージされているように感じます。

いこま魚古



田舎町にひっそりと佇んでいるようなおうちや、室内で起こる摩訶不思議な出来事。
神秘的ながら少しダーキッシュな印象をはらんでいるいこまさんの作品群です。
こちらの《祈り》という作品には、中央に配置されたスツールの周りから華奢な草花が次々と伸びている様子が描かれています。
スツールこそ置かれているものの、そこには人物や動物といったものは何も描かれておらず、どこか孤独感や喪失感といったものも感じられます。
《祈り》が意味するものとは一体なんなのか。あなたはどのように感じるでしょうか。

しまざきみく。



彼らがメッセージすることは、人の営みやその性をメタの視点から捉えた言葉たち。
宇宙や星の成分や、正しさへの畏怖といった、人間の純粋で、ある種の弱さをはらんだナイーブな部分を、しまざきさんは刺繍という柔らかい手法とイメージをもって表現されています。
時に苦痛をはらみながらも、それでも続く私たちの人間としての営みは、尊くなんと美しいことでしょう。
その宇宙的な刹那を、浮遊感をもって美しく、そして儚く表現されています。

三者三様に表現されるそれぞれの世界。
それぞれの祈りにも似た作品の数々に、鑑賞していくうちにどこか心が鎮められていくように感じます。
「混沌(カオス)」がしっぽを追いかける妖怪であるならば、私たちはこの混沌からどのように脱することができるのか。そんなことをふと思いました。
それと同時に、人間の生きる世界は尊く、そしてこんなにも美しい、そんな言葉が添えられているような、とても優しい空間に包まれているように感じました。

本展は4/5(日)まで。

<スペース詳細はこちら>

[EAST 302]

staff kome