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土本海生 『否い』

土本海生 『否い』

2020.10.16  -  2020.10.18 

[ WEST 1-G ]

展示タイトル『否い』からみなさんはどんな想像をするでしょう。否定的なイメージが浮かぶ言葉でもありますが、それだけでは無い不確かなモノを体感しながら考えてみませんか。


薄暗い空間にセットされた絵画や雑貨類。そこには、イーゼルや絵の具が置かれていることでアトリエと思われる個人的な空間が表現されています。黒を基調とした配色と薄暗い明かりが相まって静寂な時間が流れ、作品と落ち着いて向き合うことができます。

こちらの作品は部屋の中央に配置され、闇や水中に似た空間から浮かび上がってくるように顔が描かれています。肌の明るさが周りの色とのコントラストで生き生きとしていますが、血と思われる赤い液体が鼻、口を覆ってしまうほど垂れています。

しかしこれは単なる人物画とも思えないのが、虫の羽やフィルムなどいくつか別の要素が描かれているということ。これらは記号のような意味を持ち、何らかのメッセージを発信しているのではないでしょうか。

もしこの羽が蝉の羽であるのなら、全体の色味やフィルム、血の表現などの組み合わせから儚さを感じることができます。儚さは後ろ向きなイメージがありますが、それとは違って、過去が空想ではなく現実であったこと、その時確かに存在していたこと、このようなリアルと向き合えたことの証明のような意味で儚さを感じることができます。

絵画の周辺は絵の具が垂れ、物が散乱しています。誰かがこの場所にいた痕跡は残っていますがその姿はありません。絵画からも感じ取れた過去の時間というものが、ここからも感じ取れます。そしてこの場所を中心に赤い糸が四方に広がっており、それはまるで体内に張り巡らされた血管のようでもあります。

制作中に着ていた服でしょうか。付着した絵の具を見ていると、描いていた時の動きを自然と想像してしまいます。直接身に付けるものは、より鮮明に人の姿をイメージすることができます。

壁面には他にも缶のタブや瓶の蓋が大量に付いた半立体の作品や鏡が飾られ、それらにも赤い糸が絡められています。一つ一つの作品が糸で繋がれていることで、空間全体で一つの作品であるということを示すとともに、組み合わされることで全く別の印象で鑑賞することができます。

こちらの抽象絵画は深い色味で描かれ、どこまでも続く終わりのない世界を感じることができます。自然な液体の流れ、色彩のグラデーションで描かれているようにも見えますが、細かな模様が全体に広がっており、そのことに気付くと急に物体から意識を宿した生物のようにも見えてきます。模様の一部には指紋に見える箇所があります。指紋は同じ指紋を持つ人がいないと言われているので、描き込まれたこの指紋は世界にたった一人しかいない誰かのものということになります。存在証明とも言える絵画かもしれません。

『否い』についてどのように考えられたでしょうか。展示を見た方が今までどんな人生を歩んで来たかにもよって感じ方は様々だと思います。しかし、違った人生であれ各々の人生は実際に起きたことの連なりなので、今回の展示を体感することで自分自身の人生と向き合うことができたのではないでしょうか。


    ■  土本海生

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